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アップル共同創業者のウォズニアック氏、スタートアップを語る

天才エンジニアも力説するエンジニアの重要性
アップル共同創業者のウォズニアック氏、スタートアップを語る

スタートアップワールドカップでのスティーブ・ウォズニアック氏(Courtesy: Jagadeswara Rao Maddukuri)

 スティーブ・ジョブズと並んでアップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアック氏(通称ウォズ)が、3月24日にサンフランシスコで開かれた「スタートアップワールドカップ」(米フェノックス・ベンチャーキャピタル主催)にゲストとして登場しました。ワンボードマイコンの「Apple I」やホームコンピューターとして大成功した「Apple II」を独力で開発し、創業直後のアップルの躍進を支えた根っからのエンジニア。そのためか、当日のトークイベントでは、エンジニアの重要性や自分で学ぶことの大切さ、スタートアップでもあったアップル創業時の思い出、大企業がイノベーションを起こすための条件、そしてスタートアップの経営上の留意点などについて語りました。以下に概要を掲載します。

「ウォズなしでアップルはなかった」とジョブズ


「スティーブと私はずっと友達で、互いに尊敬しあっていた。2人は随分違っていて、自分は偉大なエンジニアに、またスティーブは偉大なテクノロジーを生み出す存在になりたいと思っていた。彼は実際にそうなったが。約5年の間、彼は私が設計したものの中から面白そうなものを選び出し、商品としてお金に変えていた。いつか会社を作ろうという考えは持っていたが、我々にはお金がなかったし、まだ若くてビジネス経験もなかった」

「とはいえ、スティーブは私がいなくてもコンピューターの会社を作ると決めたかもしれない。彼はパーソナルコンピューターを作るアイデアを話し、『会社を作るにはウィズニアックがいなければできない』と言った。私はそれに対し、『ノー』ときっぱり断った。我々の投資家は火曜日までにHPを辞める決断をするよう言ってきた。火曜日になって、私は再び『ノー』と伝え、『HPは辞めない。エンジニアとして生涯、HPに勤める』と言った」

「結局、スティーブが私の友達や親戚にまで電話をかけさせて一緒に会社を始めるよう説得され、やむなくHP退職をのんだ。『オーケー、アップルに加わろう。でも、あくまで一人のエンジニアとしてだ』。会社で重要なポジションにはいるが、経営にはタッチしないでいいようにしてもらった。というのも、政治的なことは全く苦手だし、自分はただ製品を設計したいだけだったからだ」

破壊的テクノロジーに留意する仕組みを


「大企業にとって大事なのは、収益の基盤であるリソースをしっかり支えることだ。破壊的テクノロジーが世の中に登場してきているのに、それを見つけられないでいると、数年後にはブラックベリーやノキアのような事態になってしまう。大企業が先々の破壊的テクノロジーにやられてしまわないように、いかに起業家のような考え方を社内に浸透させることができるかが重要だ。そこでまず提案したいのは、当時のHPがやったように最終決断を行う経営陣の末端に非常に優秀な人材を雇い入れ、彼らに個々のプロジェクトをコーディネートさせて、プロジェクト承認の経営判断を素早く行えるようにすることだ」

「もう一つはチーフ・ディスラプション(破壊)・オフィサー(CDO)の任命だ。CDOはCEO直属にはしない。CDOは新しい技術や会社が、3−5年先にメジャーになったらどうなるかをチームとともに分析する。CDOは自ら変化を先取りし、自分の会社にダメージを与える破壊的テクノロジーの影響を取り除く一方で、どうしたら自ら破壊的テクノロジーを生み出せるかという役割を担う」

ビジネスマン、マーケティング、そしてエンジニア


「会社を立ち上げたら、まずビジネスを成功させるためのビジネスマンが必要になる。マーケティングも重要だ。マーケターは他の人にどんな製品がほしいか、彼らにとってどれぐらい価値があるか、聞いたりするが、自分にとって必要なものを製品にするような例もある。例えば、テスラ。世界中の電気自動車はバッテリーを節約するために車体が小さいが、同社はその逆だ。創業者のイーロン・マスクが5人の子持ちで大きい車が必要という事情があるにしても、テスラは将来の電気自動車を姿を大きく変えた。そしてエンジニアも忘れてはいけない。ビジネスマン、マーケティング、エンジニア、この3つが重要になる」
日刊工業新聞電子版2017年4月3日付
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
スタートアップワールドカップの当日は、元アップルコンピュータのエバンジェリストとして知られたガイ・カワサキ氏もプレゼンしました。ウォズニアック氏の記事ともどもGW中の日刊工業新聞紙面に収容する予定ですので、ご期待ください。

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