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将来のデータセンターやスパコンは水中?設置に変革、企業にも商機

情報学研が「水没コンピューター」2年間の動作実験スタート
将来のデータセンターやスパコンは水中?設置に変革、企業にも商機

海水で40日間、マザーボードを動作させた前回の実験(情報学研提供)

 国立情報学研究所アーキテクチャ科学研究系の鯉渕道紘准教授らは、中央演算処理装置(CPU)などを搭載したマザーボードを、水槽や海に沈めて直接水で冷やす「水没コンピューター」の長期実験を始めた。実用化すれば、クーラーなどの熱交換機を介して熱を輸送する冷却設備が不要になる。スーパーコンピューターデータセンターで使う高性能なマザーボードを水中で稼働させ、2年間以上安定的に動作できるかを検証する。

 水没コンピューターの実験は、従来は汎用的なマザーボードで行ったが、今回は実利用を想定した高い演算能力を持つCPUを搭載したマザーボードを使用。このマザーボードを複数相互接続したPCクラスタを、屋内に置いた水槽の淡水の中で構築し運用する。

 水没コンピューターは、コンピューターを効率的に冷却する手法の一つ。鯉渕准教授らは、海中にマザーボードを設置して海水に直接排熱する実験に成功しており、これによって、冷媒となる水道水を冷やすための冷却設備を不要にした。海洋研究開発機構と共同で実験し、最長で40日間、海水でマザーボードを動作させた。

 スパコンやデータセンターで使う高性能なマザーボードは大きな発熱を伴うため、冷却技術の確立が急務。ファンによる空冷のほか、フッ素系不活性液体や鉱物油などにマザーボードを浸して冷やす技術はあるが、使用する液体が高価だったり、可燃性の冷媒だと安全面での懸念があった。
(文=藤木信穂)
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
また、水没コンピューターが実用化すれば、現在は巨大なビルの1室に置かれているスパコンやデータセンターを水中に置くことになるなど、「設置のあり方が大きく変わる可能性がある」(鯉渕准教授)。企業にとっても新たなビジネスチャンスが広がりそうだ。 (日刊工業新聞科学技術部・藤木信穂)

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