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4代目ロードスターはこうやって作りました!生みの親が語る「原点回帰」

マツダ商品本部主査・山本修弘氏「 初代のカタログに『誰もが幸せになる』と書いてある。このメッセージをずっと大事にしてきた」
 目指したのは一言で言って「原点回帰」。ロードスターのコンセプトは、初代から何も変わっていない。

 しかし、世の中の変化に対応する中で、2代目、3代目と車重が重くなってきた。走行性能自体はよくなって安全対応も進化させた。それで車の価値が上がったかというとそうではなく、運転する楽しさを奪うことにつながった。

 初代ロードスターに乗っているお客さんは、本当に2代目、3代目に買い替えてくれない。3代目を出してから、本来のロードスターに戻って、どうあるべき車なのかをもっと考えなければいけないと感じた。

 4代目を出すときには初代のお客さんが全員「4代目を買います」というように、絶対したかった。3月末にロードスターファンクラブの方々に初代から4代目まで乗ってもらった。言われたのが「4代目はいい。だけど初代は手放せない。どうしたらいいですか」ということ。答えはシンプルで「買い足すしかないです」と。それが無理な人には「初代を乗り続けて。4代目はいつでも買えるから」と言う。

 この4代目では、そういうコアなお客さん以外に新しいお客さんも増やしたい。例えば女性のドライバーなどだ。乗ると周囲から“お目が高い”といわれる車、下手な外車などには決して見劣りしない車に仕上がった。

 2007年に主査を拝命し、出るまで8年かかった。もともと12年の発売予定だったが、いったん開発が中断し、発売がずれこんだ。11年度まで4期連続で最終赤字が続く中で、本当に作りたいものは何なのか考え直すことができた。周りが暗くなったからこそ「小さな明かり」、つまりこの車で何を目指したいのかがはっきり見えてきた。

 初代のカタログを開くと「誰もが幸せになる」と書いてある。このメッセージをずっと大事にしてきた。移動のための手段では決してなく、乗ることでその人の人生を変えてしまうような車だ。

 4、5年でモデルチェンジなんて絶対しない。8年以上作り続けるので安心して乗ってほしい。初代に乗っている人も、乗り継ぐかどうかゆっくり考えてほしい。マツダがこの車を今後もずっと作り続けられるよう大事に育てていくつもりだ。
 
 <仕様>
 ロードスター(Sグレード)
 全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm
 車両重量=990kg
 乗車定員=2人
 エンジン=直列4気筒DOHC1496cc「P5―VP型」
 最高出力=131馬力
 変速機=6速手動変速機
 JC08モード燃料消費率=1リットル当たり17.2km
 価格=249万4800円(消費税込み)
 
 
日刊工業新聞2015年06月02日 自動車
清水信彦
清水信彦 Shimizu Nobuhiko 福山支局 支局長
マツダの経営危機からの復活をリードしたのがスカイアクティブ技術と魂動(こどう)デザイン。それらを注ぎ込んで最新のロードスターを出せるところまで来た、というだけで、この車の持つ意味は伝わるだろう。唯一の後輪駆動(FR)車であることや、惜しみなくアルミ材を使って軽量化したことなど、特別な位置づけを具体的な形にしたような車。ファンでなくても乗ってみたくなるはずだ。

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