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3割売り上げが減る「4兆円・東芝」の中身

社会インフラ軸に再建も生き残りへ道険しく
3割売り上げが減る「4兆円・東芝」の中身

再建策を発表する東芝の綱川社長

 東芝が海外原子力発電事業の抜本改革に着手する。米子会社ウエスチングハウス(WH)を切り離しリスクを遮断する。一方、売上高を5兆5000億円規模から4兆円規模に縮小し、社会インフラを主とする会社として再生を図る戦略を打ち出した。ただWHの切り離しにより新たなコストが発生する可能性があるほか、決算発表の再延期という事態は重く、上場廃止リスクが現実味を帯びる。東芝の生き残りへの道のりは険しい。

 「メモリーや原子力のように1兆円規模の事業はないが、3000億、5000億円の事業を着実に進める」―。会見で綱川社長は17―19年度までの中期経営計画を発表し、従来の経営方針からの転換を明確に宣言した。海外原発と半導体メモリー事業を売却すれば、全社の売上高は約3割減少する。しかし“新生東芝”では事業規模ではなく、確実に収益を出せる体制にこだわる。度重なる経営危機からの脱却は、17年度の構造改革の行方に委ねられる。

“新生東芝”の核となるのは公共インフラ、ビル・施設、鉄道・産業システム、リテール&プリンティング事業を抱える、社会インフラ領域だ。合計の売り上げ規模は1兆7000億円を超え、19年度には16年度比11%増の1兆9650億円に成長することを目指す。

 東芝が志向するのは18年度からの安定成長だ。綱川社長は「17年度中にリスク遮断、財務基盤の回復、組織運営の強化の三つを確実に実行し、収益基盤の強化につなげる」とする。従来の柱であった原発事業は連結から外すことで、リスクを最小化。もう一つの柱であるメモリーは、事業売却により将来の経営資源の糧とする。

 抜本改革のもう一つの柱が、各事業の分社化だ。自立した機動的な事業組織を作り、ガバナンス強化や事業価値の最大化を図るのが狙い。事業持ち株会社のような形態を想定しており、綱川社長は「17年度中にはやりたい」とする。

 15年の不適切会計問題発生から、東芝は幾度も“新生東芝”を掲げてきた。それでも海外原発事業を原因とした経営問題が頻発する現状に、ステークホルダーからの信頼は失う一方。中計を実現できると認めさせるには、一つひとつ着実に進めるしかない。

 「さらなる痛みを伴う改革が必要だが、経営陣で責任を持って進める。振り出しに戻った気持ちで、誠心誠意努める」と綱川社長は力を込める。信頼回復には、眼前に阻む高い壁を乗り越えなければならない。
                 

「上場廃止になっても抜本的に出直す方がいい」


 債務超過による上場廃止リスクを抱えている。同社は16年度の本決算で債務超過に陥る可能性が高く、17年度の本決算までに解消しなければ上場廃止となる。

 現在WHの米連邦破産法11条適用を検討しているとみられ、これに伴い原発プロジェクトが滞れば東芝がWHに対して抱える8000億円の債務保証の実施を求められる可能性がある。

 たとえ17年度に半導体メモリー事業を完全売却しても、破産処理コストをまかなえるかは不明だ。半導体メモリー事業の売却を17年度末に後ろ倒ししたため16年度末の債務超過は不可避。2部降格は確実だ。綱川社長は「2部降格でも信頼を回復し、上場廃止にならないよう努力したい」と述べた。

 同社幹部からは「従業員の雇用さえ守れれば、上場廃止になっても抜本的に出直す方がいいのでは」との声も聞かれる。困難な課題が山積する中、果たして東芝は新たな道を踏みだせるのか。その見通しはまだ立たない。
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
 ただWHの切り離しにより新たなコストが発生する可能性があるほか、決算発表の再延期という事態は重く、上場廃止リスクが現実味を帯びる。東芝の生き残りへの道のりは険しい。  決算の再延期で、内部統制管理の不備が明らかになった東芝。15日には上場廃止の恐れがあることを示す「監理銘柄」に指定された。また同日、内部管理の改善報告書を東京証券取引所に提出するが、審査への影響は必至だ。さらに資金繰りの悪化による債務超過の問題など、上場廃止リスクは高まっている。  東芝が不適切会計問題により特設注意市場銘柄の指定を受けたのは15年9月。経営体制を刷新し、社外取締役で構成する監査委員会に内部通報窓口を設置するなど、内部統制を強化した。  しかし16年12月に改善が不十分として指定は継続。15日に同確認書を再提出し、再審査されることになるが、「改善の見込みがない」と東証が認めた場合は、上場廃止となる。  今回、WHの一連の問題で子会社のガバナンス(統治)が効いていないことが露呈。またWHの一部経営者による不適切な圧力が明らかになり、それに伴う決算の再延期を実施した。改善が不十分とした16年12月時の判断以上に状況は厳しい。「指定解除をすれば東証の審査体制が疑問視される」との声もあり、東証としても現状を座視できない状況だ。

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