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トヨタ式のカイゼン活動で、今年こそ「ハッピークリスマス」!

ヤマハビジネスサポート、トヨタ生産方式導入で成果
トヨタ式のカイゼン活動で、今年こそ「ハッピークリスマス」!

トヨタ生産方式を取り入れた改善活動で残業時間を30%削減(右から2人目が杉田さん)

 ヤマハグループのヤマハビジネスサポート(YBS、浜松市中区、渡辺英樹社長、053・460・2013)で、給与グループの女性チームが改善活動で成果を上げている。「私が大野耐一になる」。人事業務部主任の杉田久美子さんは「知らなかったから大それたことを」とはにかむが、一念発起した改善活動で残業を30%削減。日本能率協会の改善活動の最優秀賞に当たる「大野耐一・杉山友男賞」に輝いた。

パンク寸前“ブルークリスマス”


 11月下旬から12月は、給与グループにとって1年で最大の繁忙期。気がふさぐ“ブルークリスマス”と呼ばれている。ヤマハグループ約8000人分の年末調整書類が集まり、確認と問い合わせの作業に追われる。職場の18人は、全員が女性。毎年、年末は残業続きで、現場はパンク寸前だった。

「面倒」「かえって手間が増える」


 「何とかしてあげたい」。そんな思いを強めた杉田さんの目に飛び込んだのが、トヨタ生産方式の生みの親、大野耐一氏の「カイゼン」本だった。大野氏のことは「名前を聞いたことがある程度。正直あまり知らなかった」という。

 当時はYBSが全社的な改善活動を始めた時期。給与グループにもヤマハから改善推進担当者が来て、ストップウオッチ片手に、職場で電話件数や通話時間を計測していた。上司の後押しもあり、2012年に独自の活動を開始。パソコンの5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾〈しつけ〉)活動や、5回のなぜ(5なぜ)を繰り返す“なぜなぜ分析”に取り組んだ。しかし、現場から聞こえてきたのは「面倒」「かえって手間が増える」など、変化にとまどう声だった。

全員がゴールの時間を意識


 杉田さんは「仲間を助けたい」という初心に立ち返り、コツコツ小さな改善を重ねる方針に転換した。13年に他社と交流すると「自分たちは遅れているという意識が職場に芽生えた」(杉田さん)。試行錯誤の3年で、社員の意識は少しずつ変化。そして15年、ついに年末調整業務のプロセス改善に挑戦した。

 年末調整業務は月次業務と並行しながら、書類を期限までに確認しなければならない。年に1度の仕事でメンバーも入れ替わるため、経験3年未満が約4割とスキルのバラつきも課題だった。

 まずは作業を単純化するため、独自の提出シートを作成。確認項目数を72項目から37項目へ半減した。さらに用紙を2枚に分け、分業と流れ作業を可能にした。また、全工程の進捗(しんちょく)や日々の達成件数を“見える化”することで、全員がゴールの時間を意識し、忙しい人を手伝うようになった。

 効果を実感したことで、職場から改善のアイデアが積極的に出る好循環が生まれた。ところが、16年はマイナンバー制度の導入で多忙な年末に逆戻り。「改善活動を継続し、今年こそハッピークリスマスにしたい」(同)と意気込む。
(文=浜松編集委員・田中弥生)
日刊工業新聞2017年3月8日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
トヨタの現場カイゼンから生まれた「トヨタ生産方式」、3年ほど取材していました。導入している生産現場は多いですが、事務系など間接部門のカイゼンはとにかく難しい。成果が数値で見えにくいからです。しかし取り組む全員が明確な目標を持って粘り強く行うことで、徐々に動き始めます。「働き方改革」にもつながるのでは、と思っています。

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