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光を当てるだけの折り紙技術で、平面シートから立体形状

折れ曲がる順番までプログラム可能に、米ノースカロライナ州立大が開発
光を当てるだけの折り紙技術で、平面シートから立体形状

平面シートが折り紙のように順番に折れ曲がってできた立体形状(米ノースカロライナ州立大の発表資料から)

 平らなプラスチックシートに光を当てると、あらかじめ色付きのインクを印刷しておいた部分が折り紙のように折れ曲がり、複雑な立体形状を自動的に作れる手法を米ノースカロライナ(NC)州立大学の研究グループが開発した。しかも、それぞれの印刷箇所のインクの色合いを調節することで、単色光を使い、複数の折り目が折れ曲がる順番までプログラムできるようにしたという。

 2次元のシートを3次元に展開するのにモーターなどの駆動機構や広げる手間が不要になる上、印刷費用も安く、かさばらずに運搬できることから、小型化・コストダウンにつなげられる。用途としては、生体に埋め込む医療デバイスやスマートパッケージ(賢い包装材)、人工衛星に組み込む太陽光発電パネルなどが想定されるとしている。

 これに先立ち、研究グループではポリスチレンの平面シートで作った形状の折り目にあたる部分に、さまざまな色をインクジェットプリンターで印刷。違う色の光で印刷箇所が折れ曲がるようにした。

 例えば、シアン(青緑色)のインクは赤い光を吸収し、インクを印刷した線の部分の温度が上昇して素材が縮み、そこだけが折れ曲がる。同じように、黄色いインクは青色の光を、赤いインクは緑色の光をそれぞれよく吸収し、各インクを印字した線がヒンジのように選択的に曲がって、花びらのような立体形状を作ることができた。

 さらに、この知見を発展させ、単一波長の可視光を使って折れ曲がる順番を自在に制御できる手法を見出した。それぞれの折り目に印字するインクの色合いを変えることで、光の吸収度合い、つまり温度上昇のスピードが異なることを利用している。濃い色のほうが温度上昇が速い。詳細は米科学誌サイエンス・アドバンシーズに3日掲載された。
【Science Advancesによる動画】
2017年3月5日付日刊工業新聞電子版
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
津波=Tsunamiのように、折り紙は英語でもOrigami。日本語の単語がそのまま世界に受け入れられています。上の記事以外でも、例えばDNAを折り曲げてさまざまな機能をもたせたナノ構造体を作り上げるような手法は「DNA Origami」と呼ばれていたりして、日本の伝統文化の代表格が、とりわけ研究分野に浸透しているのはなんだか感慨深いですね。

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