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これもアベノミクス?3月の独CeBIT展に日本企業が続々参戦

AI・VR・IoTで、欧州市場開拓へ
これもアベノミクス?3月の独CeBIT展に日本企業が続々参戦

(左から)能率協会の吉田氏、ドイツメッセのザース氏、在日ドイツ臨時代理大使のグラープヘア氏、ジェトロの眞銅氏(2月15日の記者会見で)

 IoT(モノのインターネット)をはじめ、最新デジタル技術を一堂に集めた産業分野向けICT見本市の「CeBIT(セビット)2017」が、ドイツ・ハノーバーで3月20−24日に開催されます。今回はパートナー国ということで、日本からは過去最高となる118社・団体が出展の予定。しかも日本企業の約9割が初出展という中で、大企業だけでなく、約半数を占める中小・ベンチャーも、今回のセビットを欧州市場開拓のきっかけにしようと意気込んでいます。

 「ドイツと日本の将来の発展に向けて、両国のさらなる協力を目指したい。中でもハノーバーはEU(欧州連合)市場の窓口であり、セビットは日本の企業がEUでビジネスを展開するチャンスになる」。15日に開かれたセビット2017の記者会見で、シュテファン・グラープヘア在日ドイツ大使館臨時代理大使はこう期待を述べました。

 企業連携に向けては、同見本市で「ジャパン・パビリオン」を運営する日本貿易振興機構(ジェトロ)も側面支援態勢を整えています。「ドイツはヒドゥン・チャンピオン(隠れたチャンピオン)と言われるニッチ・トップの中小企業が多い。展示だけでなく会期中にマッチングイベントも開催し、ドイツ企業と日本企業の連携を促進することで、日本企業の海外展開に役立てたい」とジェトロの眞銅竜日郎理事は話します。

ベンチャー企業を世界に向けて成長させる可能性


 一方、見本市の主催者であるドイツメッセのハートヴィッヒ・フォン・ザース広報リーダーによると、セビット2017の主要テーマは、人工知能(AI)を筆頭にVR/AR(仮想現実/拡張現実)、そしてIoT。ロボットや自動運転、産業用ドローンもこれらに含まれ、展示だけでなく、それぞれの分野のカンファレンス(講演会)も充実しているとのことです。

 記者会見に参加した出展企業も、「デジタル化は中小企業やベンチャー企業を世界に向けて成長させる可能性がある」(ザース氏)という部分に、大きな期待を寄せているようです。

 例えば、医療機器部品を製造する金子製作所(さいたま市岩槻区)は、複数の人がメガネをかけずに手術中の3D映像をディスプレーで見られるようにした自社開発の多視点裸眼3D内視鏡システムを出展予定。世界初の技術といい、ソフトウエアの処理速度を高速化することでリアルタイムでの3D表示を実現しました。しかも、医療分野だけでなく、ゲーム機器や産業分野などに技術を広げていくため、セビットで提携先を見つけたいとのことです。

 変わり種は、専用LEDと空調システムを使って植物工場事業を運営するスプレッド(京都市下京区)。農産物生産の工業化ではオランダやイスラエルが有名ですが、日本発の人工光および自動化技術を提げて欧州に打って出ようとしています。

 そこでもう一つ鍵になるのが、栽培データをリアルタイムに分析し、フィードバックすることで葉もの野菜の安定栽培につなげる新しい農業生産情報システム。同システムを導入する自社の大規模植物工場を4月に着工し、そこで実証を進めながら、設備やノウハウを国際展開していく計画でいます。

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日刊工業新聞電子版2017年2月20日
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
今年のセビットはそれこそ話題が盛りだくさん。安倍首相が訪問し、その機会を利用してメルケル首相と日独首脳会談を開くことにもなっています。そのほか、米国情報機関の違法な個人情報収集の実態を告発した元CIA職員のエドワード・スノーデン氏と、人工知能が人間の知性を超える「シンギュラリティ」が2045年に起こると予測したレイ・カーツワイル氏が、CeBIT Global Conferenceに登場予定。もちろんスノーデン氏はロシアから出られないので、映像を通じての参加になりますが、なかなか刺激的なイベントになりそうです。

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