マイナス金利で「神風が吹いた」金融商品

長期固定型住宅ローン、前期比7倍の例も。交錯する明暗

長期金利の低下につられ、住宅ローン金利も下がり、市場は沸いた(写真はアルヒ)

 明治安田生命保険の東京第二マーケット開発室の玉田春奈グループリーダーは昨秋、電話越しにこう繰り返した。契約済みの顧客から「私の保険に影響はあるのか」「利回りは今後も保証されるのか」と不安の声が寄せられたからだ。  マイナス金利は金融商品の販売現場にも影を落とした。生保業界では昨年、保険料を一括して納める貯蓄性商品について、販売停止や保険料の引き上げが相次いだ。  明治安田生命も10月、貯蓄性商品の販売を一部停止。マイナス金利政策の影響で市場金利が大幅に下がり、資産運用が困難になったためだ。大手生保4社の2016年4―12月期の本業のもうけを示す基礎利益は全社が減益となった。  一方で、恩恵を受けた金融商品もある。「神風が吹いた」。アルヒの宮脇訓晴執行役員は振り返る。  金利低下は住宅市場を刺激した。同社は住宅金融支援機構が手がける長期固定型住宅ローン「フラット35」の取り扱い最大手。16年4―12月の借換実行件数は前年同期に比べ7倍の9100件。8月は単月で1700件と過去最高を記録した。  「金利に敏感ではない方の問い合わせも多く、マイナス金利下でどう動いたらよいかわからないという質問も多かった」。新生銀行の執行役員の種子島一美住宅ローン部長はマイナス金利導入直後を振り返る。  同行はマイナス金利が導入された16年2月に金利の月中見直しという銀行業界では異例の決断を下した。他行よりも一足早く動いたことが奏功し、2、3月は住宅ローンに関するコールセンターへの入電が前年同月比で4―6倍に増え、借り換えの申し込みは同3倍となった。  黒田東彦日銀総裁は15日の衆院財務金融委員会でマイナス金利政策の効果を問われ、「貸し出しや住宅ローンの金利低下につながった」と述べたが、“特需”の季節は終わりつつある。  16年11月の米大統領選を契機とした長期金利上昇の影響で住宅ローン金利は引き上げられている。その後、旺盛だった住宅投資も失速感が顕著。16年10―12月期国内総生産(GDP)速報値で住宅投資は前期比0・2%増で4四半期連続のプラスだったが、伸び率は鈍化。1―3月期はマイナスになる可能性もある。  日銀のデフレ脱却に向けた2%の物価上昇率は遠のく。16年の消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年比で4年ぶりにマイナスに沈んだ。トランプ氏の米大統領当選後に円安をもたらした追い風も弱りつつある。 (文=栗下直也)

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