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「PHVこそエコカー普及の要」 トヨタの本気度は確信か意地なのか

“ミスタープリウス”が明言、FCVとEVの普及「まだまだ時間がかかる」
「PHVこそエコカー普及の要」 トヨタの本気度は確信か意地なのか

新型「プリウスPHV」と、CMに出演する石原さとみさん

 トヨタ自動車がプラグインハイブリッド車(PHV)の普及に向けアクセルを踏み込む。15日、トヨタはPHV「プリウスPHV」の2代目モデルを同日発売したと発表した。2012年に発売した初代モデルは苦戦を強いられたが、今回はその反省を生かし「市場に受け入れられるものをつくった」(トヨタ幹部)。ハイブリッド車(HV)でエコカーの流れを切り開いたトヨタ。PHVは「その次」に位置付けるエコカーの本命として拡販へ本気度を示す。

 「PHVこそエコカー普及の要」。15日都内で開いた発表会で内山田竹志会長は、トヨタのPHVの位置付けをこう強調した。

 トヨタはエコカー開発で全方位の基本姿勢を示す。ただ強弱はある。従来はトヨタの「電動化車両のコア技術が盛り込まれている」(内山田会長)HVに重きを置いた。

 今後は各国での規制強化をにらみPHV、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)を含めた「全方位(開発)をより早く進める」(吉田守孝専務役員)考え。

 中でもFCVを「究極のエコカー」と明確に設定する。ただFCVはインフラ整備など普及への課題が多い。同じく走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション車のEVも、社内ベンチャーを立ち上げ開発を強化するが、電池性能など技術課題がある。いずれにせよ普及には「まだまだ時間がかかる」(内山田会長)とみる。

初代は苦戦、その反省を生かす


 PHVは「普及に必要な条件を備えている」(同)として、ゼロエミッション車普及までの間を埋める「エコカーの大本命、主流となるべきクルマ」(同)と強い思いをかける。12年に投入した初代プリウスPHVは当初、年間販売6万台を掲げ意気込んだ。

 ところが累計販売台数は約7万5000台と苦戦した。プリウスと姿形は同じなのに割高で、割高分の特徴を伝え切れなかった。

 反省を生かし2代目は「お客さまの期待を超える別次元の進化をした自信作」(内山田会長)に仕上げた。特徴あるデザインとし、EVモードの走行距離を従来比2・5倍の68・2キロメートルに拡大した。

 消費税込みの価格は326万1600―422万2800円。国内の年間販売目標は3万台と設定。海外では北米で16年11月から先行販売しており欧州などにも順次、投入する。
新型「プリウスPHV」の主要システム

コネクティッド戦略でも先陣


 本気度は車両改良だけではない。「新プリウスPHVはコネクティッド戦略の先陣となるクルマ」(友山茂樹専務役員)。新型はトヨタブランドで初めて大半のモデルに車載通信機(DCM)を搭載する。

 スマートフォンから車両の充電状態の確認やエアコン操作が可能。車両の警告灯が点灯すると即座に解析し、自動で異常要因の推定や走行可否判断などをする「IoT(モノのインターネット)時代にふさわしい安心サービス」(友山専務役員)にも乗り出す。

 また電力5社と共同でPHVのEVモード走行距離などに応じて電力会社が顧客にポイントを付与する、DCMを生かした新サービスも始める。2代目プリウスPHVは、コネクティッドによる新たなサービスという先進性を付与し、PHVの魅力を訴求する。

 トヨタは97年の初代プリウス投入以来、約20年をかけてHV累計販売1000万台を突破した。内山田会長は「PHVの1000万台への道は、もう少し早いのでは」と普及に大きな期待を寄せる。
「PHVこそエコカー普及の要」と強調する内山田トヨタ会長

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(文=名古屋・伊藤研二、池田勝敏)
日刊工業新聞2017年2月16日「深層断面」から抜粋
池田勝敏
池田勝敏 Ikeda Toshikatsu 編集局経済部 編集委員
HVの代名詞、初代プリウスの開発責任者の内山田会長が、HVの次にくるエコカーはPHVが本命だと宣言したことに強いメッセージ性と本気度を感じる。トヨタがPHVの普及に力を入れるのは、米国ではカリフォルニア州が主導するZEV規制の影響が大きい。18年式からHVが除外される。 ただ、トランプ大統領が人為的要因による地球温暖化に懐疑的とされ、環境規制の動向に不透明感が漂う。先月の米ビッグスリーCEOとの会談で、環境規制は「手に負えなくなっている」と発言。燃費基準の緩和を示唆したとみられている。とはいえ「米国でどんな決定が下されようと排ガスを軽減するという世界的なトレンドは続く」(カルロス・ゴーン日産自動車社長)。車各社がエコカーの普及を迫られる流れに変わりはない。政策動向が読みにくく、当面は既定路線をとらざるを得ないという事情もありそうだ。

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