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ホンダ流、EV技術の見切り方

日立オートモティブとモーターで新会社
ホンダ流、EV技術の見切り方

7日に会見した関秀明日立オートモティブ社長(左)と八郷ホンダ社長

 ホンダと日立オートモティブシステムズ(AMS)が電動車両の基幹部品であるモーターで協業する。「ホンダに(取引を通して)いろいろ提案する中でどちらともなく始めようとなった」。関秀明日立AMS社長は7日の会見で、共同出資会社設立で合意した経緯をこう説明した。世界的に厳しさを増す環境規制が両社の背中を押した。

 ホンダは2030年頃に世界販売の3分の2をハイブリッド車(HV)などの電動車両にする計画を打ち出した。実現には国内外でモーターの生産体制を整えないといけない。ホンダは昨年、唯一のモーター生産拠点となっている日本で生産能力を引き上げたばかり。2大市場の米・中でのモーター生産の現地化が必須だった。

 「モーターは投資がかさむ部品だ」(八郷隆弘ホンダ社長)。リスクを避けたいホンダに日立AMSとの協業は渡りに船だろう。両社は新会社を通じた中・米での現地生産でも合意した。両国とも日立AMSの既存設備を活用する方向で投資も抑えられる。

 サプライヤーに開発・生産を一任する選択肢もあるが「モーターはわずかな性能差が車全体の性能に大きく影響する」(ホンダ研究者)。技術を手の内にしておく必要がありトヨタ自動車日産自動車も自社で手がける。

 日立AMSも電動車両拡大の波に乗ってモーターを拡販しようにも、車メーカー主導の状況では思うように進まなかったと見られる。今回ホンダという大口供給先を得られるのもメリットだ。

 課題は新会社がホンダ以外の車メーカーに売り込めるかだ。この点関社長は「他の車メーカーから競争力のあるモーターであれば構わないとの声をもらっている」と話す。

 別の基幹部品である車載用リチウムイオン電池も同様に、車メーカー各社が電池メーカーと一時、共同で会社を相次いで設立した。だが納入先の拡大が進まず株式を手放す動きも一部で出ており、外販の成否が鍵となりそうだ。

日刊工業新聞2017年2月8日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
自動車はスマホなどと違い使いながら改良する手法は通用しない。非常に難しいが完ぺきさを求められる。特にEVは論理的にすべてコントロールできる。機械や電子技術の区別なくトータルで最適な条件を考える必要がある。 モーターやインバータのサプライヤーもエネルギーマネジメントまでは手を出せない。例えば、EVでアクセルを目一杯踏むと、モーターは低速時からトルクが出てホイルスピンしてしまう。これ以上トルクを出さないという制御機能は完成車メーカー側にある。 今後、制御やエネルギーマネジメントの部分を完成車メーカーがどこまで自社で抱え込んでいけるのか、いくのか注目したい。

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