ニュースイッチ

失神は心臓突然死の予兆、診断は“現行犯逮捕”しかない!

有用性高い皮下心電計、不必要な過剰検査の抑制にも
**専門医は語る
<産業医科大学医学部不整脈先端治療学教授・安部治彦氏>

 失神は国内で年間80万人の患者がいると推定される。自動車運転や就労、通勤・通学など社会生活、日常生活に及ぼす影響が大きく、心原性失神の場合には心臓突然死の予兆である場合もある。

 失神は症状であり病名ではない。適切な治療のためには原因となる疾患の特定が重要で見逃してはいけない。原因の診断は“現行犯逮捕”しかない。例えば脳梗塞などは画像診断で分かるが、不整脈は発作が出た瞬間だけだ。心電図などで発作時の“証拠”を捕まえるのが必要だ。

 心電図には健康診断で一般的な「12誘導心電図」などのほか、「皮下挿入型心電計」は長時間の心電図モニターが可能で、いつ発生するか分からない失神の原因診断には有用性が高い。従来の低い診断率改善や不必要な過剰検査の抑制が期待できる。(談)

医師の知識不足、高い誤診率


日本メドトロニックの植え込み型心臓モニター「リビールリンク」

 気絶や貧血、めまいなど、突然意識を失い倒れる失神。意識を失っている時間が1分以内と比較的短く、回復も早いので軽視されがちだ。だが、ケガや交通事故など二次的被害はもちろん、失神の原因に突然死に至る病気が隠れているケースもある。原因となる病気を適切に治療するため、まずは原因を特定することが重要になる。

失神は脳全体に十分な血液が供給されなくなり、一時的に意識を失うことを指す。「てんかん」も症状は似ているが失神ではない。

 失神の原因は多岐にわたる。急に立ち上がった直後に失神する「起立性失神」や、長時間立っている時に失神する「反射性失神」、不整脈など心臓の病気による「心原性失神」などがある。

 大きく違うのは発作後の生命への影響だ。反射性失神は生命への危険性が低いが、心原性失神は心臓突然死を起こす危険性が高い。原因の解明が重要だ。

 原因の特定には複数の検査が必要になる。だが、産業医科大学の安部治彦教授は「複数の検査をしても原因の特定に至らないことも多い」と指摘する。医師の失神に関する知識不足による原因疾患の診断率の低さや高い誤診率が課題だ。

 心原性失神も原因を特定すれば適切な治療ができる。最近では心電図モニターの発展もあり、原因不明の失神も減りつつある。

 胸部皮下に植え込み、最長3年間不整脈などを記録する「皮下挿入型心電計」などもある。安部教授は「皮下挿入型心電計は長期間の監視ができるので、原因不明の失神について診断率が高い」と話す。

 日本メドトロニック(東京都港区)も2016年9月に従来比で87%小型化した植え込み型心臓モニターを発売した。「植え込みに対する患者の抵抗感を軽減できる」(CRHF事業部)とし、同製品による検査法の普及に期待している。
(文=村上毅)
日刊工業新聞2017年1月31日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
医療機関でも失神への知識が乏しかったり、詳しい診断の進め方ができていないため、複数の診療科を“たらい回し”になり、高額の検査の繰り返しているケースもあるそうだ。失神の原因で治療法も、その後の生命への影響も違う。正しい知識が必要だ。

編集部のおすすめ