グーグルも驚いた!アフリカで知名度No.1の中古車ECベンチャーとは

<情報工場「読学」のススメ#23>日本人の知らないニッポン企業

**アクセス殺到に驚いたグーグル副社長が緊急来日  「中古車販売」と聞いて、どんな企業名が思い浮かぶだろうか? 業界最大手のガリバー、買取でいうとアップルやラビットあたりだろうか。  もしアフリカの人たちに同じ質問をしたとしたら、誰の口からも同じ名前が出てくるはずだ。「ビィ・フォアード」。聞いたことがない人も多いだろう。だが、これは日本企業の名前なのだ。  ビィ・フォアードは、東京都調布市を本拠とする同名のEC(電子商取引)サイトの運営会社だ。扱っているのは主に中古車と自動車部品。いわゆる越境ECであり、世界120カ国以上の消費者を相手にネット販売を展開している。  先ほど「アフリカの人たち」と書いたのは、ビィ・フォアードのアフリカ諸国をはじめとする新興国・途上国での人気が凄まじいからだ。2014年には、ビィ・フォアードへのアフリカからのアクセスがあまりに多いことにグーグル本社の役員たちが驚き、副社長が同社に話を聞きにわざわざ来日したそうだ。  そんなエピソードから始まる本書『グーグルを驚愕させた日本人の知らないニッポン企業』(講談社+α新書)では、ビィ・フォアード創業者で代表取締役の山川博功さんが、成功までの軌跡と要因、ECやアフリカビジネスのコツなどを自ら詳しく語っている。  山川さんは、大学卒業後、東京日産自動車販売に入社するも3年で退社。転職を繰り返した後に中古自動車買取業のカーワイズに入社、1999年にグループ内で独立しワイズ山川を設立する。2002年に中古車輸出を始め、2004年には輸出部門を独立させビィ・フォアードを設立している。  ビィ・フォアードが新興国・途上国で受け入れられた要因はいくつもある。まず、現地の業者を通して消費者に届けるというそれまでの中古車輸出の常識を覆し、エンドユーザーがネット上で直接購入できるようにした。  スマホやPCで24時間どこからでも注文ができ、中間マージンがカットされているため安く買える。さらに同社は独自の物流ルートも開拓したために、従来よりも早く届けることが可能になった。同サイトがスタートしたのは、ちょうどアフリカなどの新興国・途上国ではネット環境が整備され、スマホが爆発的に普及し始めるタイミングだったことも大きい。  ただし、山川さんは設立当初からこうした戦略を描き、事業計画を立てていたわけではない。アフリカでこれほどまでに人気に火がつくとは予想だにしていなかったそうだ。わるく言えば「行き当たりばったり」だが、舞い込んだチャンスを逃さず、その時々の最適解を探してきたということだ。  中古車輸出に目をつけたのは、(業者が買い取った中古車に値をつけ売却するために行われる)オークションの会場で、日本では不人気の車を高値で落札していくパキスタン人を見かけたのがきっかけだった。  輸出が儲かると思い、すぐにミャンマーで現地業者を間に挟み販売してみたが、中間業者に騙され失敗。次にニュージーランドでチャレンジするも、競合が多く2億5000万円の損失を被ることに。  そこで、競合と差別化するために、自らの強みを生かしてスポーツカー専門の中古車輸出をスタートする。ミャンマーとニュージーランドでは販売する中古車を先に現地に送って失敗した反省も踏まえ、ネットで注文を受けた車のみを送る方式にした。 <次のページ、理由は「オイシイ商売のように見えた」>  当初は自社サイトのみで売っていたため集客がままならなかったが、2006年からは中古車輸出専門のポータルサイトに加盟。それをきっかけに徐々に顧客を増やしていった。  ここで山川さんがとった方法は、他の業者には簡単に真似のできないものだった。中古車はいつ、どんな車が出てくるか予想できない。商品としてサイトに載せるためには、まず現物を手に入れなくてはならない。売れなければ、損失を被ることになる。  山川さんはビィ・フォアードの他に買取業者であるワイズ山川を経営していた。ワイズ山川にはそれまでに買い取った中古車が山ほどある。山川さんはそれらの写真を撮り「お試し」でどんどんビィ・フォアードのサイトに載せていった。売れなければ、ワイズ山川からオークションに出せばいいだけだ。  スポーツカー専門店の看板は下ろし、いろいろなタイプの車を試験的に販売することにした。日本では廃車になるような車もダメもとで載せていたが、これがアフリカで飛ぶように売れていく。  日本では買う人がいないような古い車でも、アフリカでは十分魅力的な商品だったのだ。しかも安い。こうしてアフリカの人たちの心をがっちりと掴んだビィ・フォアードは、成功への道をまっしぐらに進んでいく。  本書の中に、山川さんの行動指針を象徴するこんな言葉を見つけた。「何でも実際に試してみないと、本当のところはわからないので」。輸出が「オイシイ商売のように見えた」という理由のみで、ワイズ山川に輸出部門を作った時の言葉だ。まず「行動」し、「試して」みる。失敗したらそこから学べばいい。山川さんは、そんな考えのもと挑戦を続けてきた。  こうした考えは、シリコンバレーのイノベーションを支える「デザイン思考」にも通じるものではないだろうか。『スタンフォード大学dスクール 人生をデザインする目標達成の習慣』(講談社)によれば、デザイン思考の震源地として知られるスタンフォード大学dスクールの基本原則の一つに「行動重視」がある。  これは「正しい行動の道が開けるのを何もせずに待つより、何か行動を起こして失敗するほうがいい」ということを意味する。  また、デザイン思考のポイントの一つには「プロトタイプ」がある。プロトタイプは見本や雛形を意味し、まず考えたことを試しに形にしてみて、それに対する反応や不具合などから学び、修正していく。これも、まさに山川さんのやってきたことだ。  おそらく山川さんは、とくにデザイン思考を意識して事業アイデアを練っていたわけではないだろう。日本発で新興国・途上国を相手に商売をするビィ・フォアードは、シリコンバレーのスタートアップのイメージからは遠いような気もする。  だが、この両者の根っこにあるものは共通している。ビィ・フォアードは図らずもデザイン思考の優れた実践例を提供したともいえるだろう。 (文=情報工場「SERENDIP」編集部) 『グーグルを驚愕させた日本人の知らないニッポン企業』 山川 博功 著 講談社(講談社+α新書) 208p 840円(税別)

続きを読む

特集