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男性が最初に挑戦する魚料理は「アジ」がベスト!

長谷川弓子さんに聞く「基本から身につける 季節の魚料理」
 ―経営学を学んで就職したのになぜ料理の道に進んだのですか。
 「中学から明治大学の付属で、そのまま高校、大学に行った。当時は自分の目指すものというのはなかったが、就職してから本当にやりたいことは何かと考えるようになった。家族にその道を究めようというタイプが多いことに影響されたのかもしれない。ほとんど料理はしなかったが、中学の頃、栗原はるみさんという料理研究家に憧れていて、それが潜在意識の中にあったのだと思う」

 ―料理の道を究めようとしたのですか。
 「料理人になりたくてもすぐになれるわけではなく、会社勤めで学費をためて専門学校に入り、栄養士の資格を取った。27歳の時に近茶流宗家の門をたたいた」

 ―近茶流宗家とはどのような流派なのですか。
 「(江戸時代後期の)文化文政の頃から続いている流派で、現宗家の柳原一成氏の父の敏雄氏が近茶料理を体系化された。私は内弟子として朝から夜の11時頃までトイレ掃除から、先生の白衣のアイロンがけ、庭の掃除などをやりながら、旬の魚の下処理をしていた。5年間、給料をもらいながら技術を教えていただき、外で教えてよいという資格を運良くいただくことができた」

 ―それで大学で教えているのですね。
 「調理実習以外に食文化や調理学を教えている。調理学はなぜ野菜はこう切るのか、なぜ飾り包丁や隠し包丁を入れるのかということも教える。蒸したサツマイモが甘いのはベータアミラーゼが働くからだというように、調理学で科学的根拠に気付くこともできる」

 ―料理本は多いが、なぜ魚料理の本なのですか。
 「日本は海に囲まれ、海の幸が多いのに、若い人たちは魚離れが進んで生魚が食べられない子が多い。また、おろし方や調理法が分からず面倒だという若い人も増えている。でも魚料理は決して難しいものではなく、知れば知るほど楽しく、何よりもおいしいものだということを伝えたかった」

 ―本紙の読者は男性が多いのですが、男性でもできますか。
 「男性にこそ、読んでいただいて挑戦してほしい。料理をしない男性や若い女性は魚をおろすのに勇気がいると思っている方が多いが、そんなことはない」

 ―本を読んだ男性の感想も寄せられているのですか。
 「意外と男性の方に共感していただいている。この本を読むと料理したことがない人がやりたくなるという感想も届いている。それは工程をたくさん載せたからだと思う。今の料理本は時間を短縮する調理法が多い。これは逆に魚をおろすところから手間暇かけるが、本の通りにやればできますよという工夫をしているつもりだ」

 ―手間暇かかるのは定年退職した人にぴったりですね。
 「時間をかけて魚をおろし、奥さまを喜ばせてあげたら最高です。男性は魚の構造や細かいことに詳しく、始めると凝る人が多い」

 ―では男性が最初に挑戦する魚は何がよいですか。
「アジが基本。アジができればほかの魚は何でもできる」
長谷川弓子さん

(聞き手=山崎和雄)
【略歴】長谷川弓子(はせがわ・ゆみこ)聖徳大学短期大学部総合文化科専任講師。02年(平14)明治大経営卒。3年間の百貨店勤務の後、栄養専門学校で学び、栄養士の資格を取得。07年に近茶流宗家の柳原一成氏、柳原尚之氏に師事し、5年間、日本料理を学ぶ。12年4月聖徳大非常勤講師、16年4月同専任講師。東京都出身、37歳。著書『基本から身につける 季節の魚料理』(地球丸)
日刊工業新聞2017年1月23日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
うちの実家は割烹で父も料理をします。さばくだけでなく、天ぷらなどの揚げ物、煮付けはやっぱり難しくセンスにも左右されますね。

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