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「定時退社」の違和感

すべての仕事が職場に結びついているとは限らない
 「××社が定時退社制度を導入」―。大手広告代理店の事件の影響と思われる話を、あちこちで聞くようになった。霞が関の中央省庁では毎週水曜日の夕方に決まった音楽が流れ、職員が一斉に退庁する。

 上司にみせるための残業、だらだら仕事の延長線上の残業をなくすことに異存はない。ただ定時退社を強調しすぎる最近の風潮には、いささか違和感を覚える。すべての仕事が職場に結びついているとは限らない。

 バブル時代、若かったせいもあるだろうが、しんどい残業をした。それを終えた後の解放感は格別だった。休日もリフレッシュできた。スマートフォンやメールなどの通信手段が発達した現代は、こうはいかない。何時にどこにいようが、仕事が追いかけてくる。

 定時退社を推進しても、こうした部分にメスが入れられなければ生産性向上にならないのではないか。緊急出荷対応やクレームの即時処理など、ライバルと差別化するためのサービスが重視される風潮にも責任の一端がある。

 労働時間短縮や休日取得の先進国であるドイツでは、深夜・休日に業務メールを禁止する会社もあると伝え聞く。従業員の心のゆとりと成果向上をいかに両立するか。解決策が、どこかにあるはずだ。
日刊工業新聞2017年1月17日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ある超大手企業は残業理由の申告を含め勤怠管理が滅茶苦茶厳格になり、面倒になっている(システム的に承認されない)。といいつつ、「働き方改革」の記事を量産しているメディアが一番遅れている業種でもあるのだが。。

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