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ソニーから買収で気勢を上げる村田製作所の電池事業。次の一手は

村田恒夫社長インタビュー「次世代の全固体電池を18年度中に出す」
ソニーから買収で気勢を上げる村田製作所の電池事業。次の一手は

村田社長

 ―売上高の約6割を占める通信向け市場の動向をどう見ていますか。
 「スマートフォンの台数の成長はあまりないが、高機能化で主要部品の点数は拡大し続けている。特に中国で進む高機能化の動きをしっかり押さえ、モジュールの多様化に対応することが大事だ」

 「また非常に高い周波数帯域が使用される第5世代移動通信(5G)に対応した商品の開発にも力を入れて、業界の動きを注視してタイムリーに技術を提供していく。表面弾性波(SAW)デバイスでは従来より高い周波数帯域に対応した新デバイスで、年率10%成長を目指す」
 
 ―車載向け部品も年率10%伸びています。
 「電気自動車(EV)では炭化ケイ素(SiC)などの高性能デバイスが使われ、より耐熱温度の範囲が広い部品が要求される。指月電機製作所と共同会社を設立し、新しいフィルムコンデンサーの開発・製造を始めたのもそのためだ。当社が素材を開発し、指月電機のノウハウを生かして製造している」

 ―2016年にM&A(合併・買収)を行った企業をどう活用しますか。
 「仏アイピーディアは医療向けに強い3次元(3D)シリコンキャパシターの技術を持ち、ペースメーカーをはじめ、埋め込み型機器などに使用されている。過酷な環境で使用できるため、将来的に携帯電話の薄型化や車載用途に応用できる」

 「プライマテック(東京都世田谷区)は樹脂多層基板『メトロサーク』用の液晶ポリマー(LCP)素材を手がけるが、子会社化で垂直統合型の生産体制を強化する。スマホやウエアラブル向けを中心に展開し、現在数百億円の同基板の売上高を、3年後に約1000億円に高める」

 ―4月にソニーから買い取る電池事業への期待は。
 「リチウムイオン二次電池は携帯電話用のラミネート型と、産業用の円筒型の大きく二つに分類される。成長率が高い産業用に思い切って投資すれば、収益は大幅に改善するだろう。初年度に数百億円規模で投資し、増産体制の構築と技術レベルの改善を図る。電池事業全体で年率10%の成長を実現して、21年3月期に売上高2000億円を目指す」

 「次世代電池として期待が高まる全固体電池も19年3月期中には市場に出したい。まずはウエアラブル向けなど小型デバイスから展開する。二次電池をエネルギー市場の中核商品にする」
(聞き手=京都・園尾雅之)
日刊工業新聞2017年1月17日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
スマホなど通信分野では高周波対応や高機能対応でリードし、存在感を示し続けてきた。ただ、足元で世間の関心を集めているのは、赤字続きだったソニーの電池事業をどう黒字化するかということ。村田製作所もリチウムイオン二次電池の開発を10年以上続けてきたが、商品化には至っていない。今後どのような投資を行い、どんな事業展開のシナリオを描いているのか注目が集まる。 (日刊工業新聞京都支局・園尾雅之)

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