ブロックチェーンとビットコイン、再生可能エネルギーも変える!?

電力を使う需要家同士のやりとりが簡単に

フランス南部の街カロ (Getty Images)

 ここへ来て、またブロックチェーンが何かと話題になっている。ブロックチェーンによって生み出された「ビットコイン」が、テクノロジー史上最大級の革命的アイデアのひとつであると目され、このところは時価総額が急騰・急落したりと注目されいる。  何もないところから生み出された、まったく新しい形の通貨であるにもかかわらず、世界ではすでに人々がそれを使って、コーヒーから電子機器にいたるまで様々なものを購入できるようになっている。  しかし、仮想通貨システムはブロックチェーンがもたらす可能性のほんの一部にすぎず、そこにはもっと大きな可能性があると考えられている。今回は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)のグリッドソリューション事業部でスマートグリッド戦略リーダーを務めるローラン・シュミット氏が、その仕組みと可能性について解説する。  まずは、ブロックチェーンについて簡単におさらいを。ブロックチェーンは複雑なテクノロジーだが、絶えず即座に更新されている巨大な台帳のようなものと考えるとよい。  たとえば、誰かがビットコインで何かを売ったり買ったり売ったりする。その取引は毎回ブロックチェーンに記録される。つまり、あらゆる取引が仮想の基金によって即座に清算され、恒久的に、検索可能な状態で、なおかつ匿名で記録されていく。  したがって、取引清算機関やクレジットカード会社のような仲介者は不要。金融業界はすでに、このテクノロジーの活用を進めている。ブロックチェーンを使って送金のスピードを上げ、銀行のP2P(ピアツーピア)消費者取引を促進する新たな企業が次々に登場。日本国内でも昨年11月末にメガバンクがブロックチェーンを活用した国内送金の実証実験を行なったことが報道され、実用化への期待は徐々に高まりつつある。  しかし、ブロックチェーンが変えるのは金融の世界だけではない。将来的には、法的権利、証書、音楽、芸術、さらにはグリーンエネルギーまで、価値を持つものの取引はすべてブロックチェーンを使って行なうことができる、そんな可能性を秘めいる。  シュミット氏も、このグリーンエネルギーの取引にブロックチェーンを活用することに着目。ブロックチェーンを利用して、電力会社と家庭が再生可能エネルギーを透明性のある形で売買できるのはないかと考えている。  再生可能エネルギーを活用する上では「発電量のコントロールが難しい」ことは、避けては通れない課題。日照や風は人間にはコントロールできないので、発電量が過多、過少になるリスクは常に存在する。  発電量が少ない場合には、信頼性の高い水力発電所や火力発電所を稼働して不足を補えばよいが、厄介なのは多すぎる電力が総電網に送り込まれた時への対処だ。  この難題を解決すべく、GEはフランス南部の街カロにおいて、新しいタイプのコミュニティを創出する支援を行っている。この町の住民はみな、電力の生産者(プロデューサー)であるとともに消費者(コンシューマー)でもある、いわゆる「プロシューマー(生産消費者)」の先駆け的存在と言える人たち。  ここでは、基本的にすべての住宅が小さな自家発電所であって、住民は自分たちが使う電力を自宅で生産している。自宅で生産した電力は、自分で使うことも、蓄えることも、さらには売ることもできる。  そうすることで、電力の流れを「ゴルディロックス・ゾーン(多すぎも少なすぎもしない範囲)」に収めるために貢献している。  これを可能にしているのが、カロにある世界初のスマート太陽光発電送電網。これは、カロが再生可能電力を送電網に統合する大規模な実験の本拠地だからこそ。  GEは、フランスの送電網運用者エネディス社と共同で民家と商用建物の屋根にソーラーパネルを設置してデマンド・レスポンス・テクノロジーを導入、送電網全体に蓄電設備を設けてる。  また、送電網から生じる需要予測と天気予報を消費量の情報と組み合わせ、GEの分散型エネルギー資源マネジメント(DERM:Distributed Energy Resource Management)ソフトウェアによって分析を行っている。  このシステムの力で、カロの街は消費者(より正確にはプロシューマー)同士がニーズに応じて電力を即座に売買できる「マイクログリッド」の集合体へと変貌したのだ。  昼間不在している住宅所有者は、日中の電力ニーズが高い企業に対し、自宅で発電した電力を売却することができる。そして帰宅後には、近所の蓄電池や電気自動車、あるいはエネルギー価格の変化に柔軟に対応可能な企業から電力を買うことができる。  同様のアプローチはオーストラリアでも採用されている。エネルギー分野のスタートアップ企業であるパワーレジャー社は最近、ブロックチェーンを使って個人間で電力を売買することを可能にする試験的プログラムをパース周辺で開始した。  この新しい経済を成立させる鍵がソフトウェアだ。「DERM」のようなソフトウェアが、そうした取引を可能にすると同時に、総電量が物理的な送電キャパシティを超えることのないように管理している。  ブロックチェーン・テクノロジーは必ず、現状を新たなレベルへと押し上げ、前進していくはず。ビットコインに加え、「グリーンコイン」をやり取りし、電力のかたまりを即座に移動させることも不可能ではない。  スマートグリッドとブロックチェーンを組み合わせれば、安価でクリーンな再生可能エネルギーを送電網から住宅へ、そして住宅から送電網へと、常に透明性のある方法で送ることができるようになるかもしれない。  今はまだ、その可能性を垣間見ているに過ぎない。しかし、いずれは誰もが電力のプロシューマーになっていくことだろう。その時には、カロの例が示すように、明るい未来が開けていく。

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