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横浜港はLNGの国際供給拠点になるか。排出ガス規制に先手打つ

国交省、船舶呼び込み競争力向上狙う
横浜港はLNGの国際供給拠点になるか。排出ガス規制に先手打つ

横浜港をLNGバンカリングの国際的な拠点とする(現在の横浜港)

 国際的な船舶の排出ガス規制の強化が2020年に始まる。これを前に、国土交通省が横浜港を船舶から船舶へLNG(液化天然ガス)燃料を供給するバンカリングの基地とする取り組みを進めている。20年までにLNGバンカリング船を1隻建造し、東京ガスの袖ケ浦LNG基地(千葉県袖ケ浦市)を拠点に船舶から船舶へのバンカリングを開始。その後、LNG燃料船の普及をみながら、段階的に横浜港をLNGバンカリング拠点に整備する。日本の港湾をLNG燃料の供給基地とすることで船舶を呼び込み、国際競争力の向上につなげる。
 
 船舶の排出ガス規制をめぐっては、日本を含む一般海域の硫黄酸化物(SOX)の規制が20年に始まる。この対策の一つが、重油を燃料とする船舶から、SOXを排出しないLNG燃料船へのシフトだ。先行して規制強化が進む欧州では客船などを中心にLNG燃料船が増えており、こうした動きが世界に広がるとみられている。

 国交省は16年6月に「横浜港LNGバンカリング拠点整備方策検討会」を設置。7回の会合で、横浜港をモデルケースにLNG燃料の供給体制や需要創出、制度設計などを検討してきた。

 12月にとりまとめた整備方策では、20年をめどに始める袖ケ浦基地でのバンカリングに関わる事業費を約60億円と試算。袖ケ浦基地には、LNGバンカリング船に対応した施設が既にあるため、事業費のほぼ全てがLNGバンカリング船の建造費となる。船の建造や運航などの事業主体については、地方自治体や民間企業などと今後調整する。

 その後は、LNG燃料船の運航拡大による需要拡大をにらみながら、2隻目のバンカリング船を建造。時期のめどは明確にしていないが、横浜港を拠点にバンカリングを実施する。事業費は、LNGバンカリング船の建造費や横浜港の出荷施設の整備などで約100億円を見込む。

 横浜港をLNGバンカリングの拠点として整備するには、LNG燃料船の普及、拡大が不可欠となる。国交省ではLNG燃料船の建造を増やし、横浜港の利用を促進するため、インセンティブの付与や低コストの供給方法などを今後、検討する。
日刊工業新聞2017年1月10日
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
これまで日本の港湾は、世界で拡大している1万TEU(1TEUは20フィートコンテナ)以上の大型コンテナ船が就航できないなど、施設の整備で後れを取ってきた。国交省は、LNGバンカリングについては先手を打って拠点整備を進めることで、日本の港湾の存在感を高めたい考えだ。

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