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【世界に誇るテックベンチャー#04】ペジーコンピューティング

コピー機大で「京」並みのスパコン開発を目指す 斉藤元章社長インタビュー
 ―元々は医師だったとか。
 「医師である場合は自分の代わりはたくさんいるが、医療と工学を融合した領域なら自分しかできないことがあるのではないかと思った。1997年に医療画像処理の企業を立ち上げたのが最初の起業だ」

 ―ペジーコンピューティングを設立し、スーパーコンピューターの開発を始めたきっかけは。
 「一つは東日本大震災以降、科学技術立国と言われてきた日本の地位が低下してきたと感じていたことだ。優秀な人は多くいる。小型でも性能や消費電力効率が高く、維持費がそこまでかからないスパコンをあまねく使えるようになれば、地位を取り戻せるのではないかと考えた」

「もう一つは人工知能(AI)が人間の知能を超える『シンギュラリティ(特異点)』の前段階で、社会構造の転換点である『プレ・シンギュラリティ(前特異点)』の基盤となるのが次世代スパコンだからだ。我々の技術でなし得てみたい」

 ―コピー機ほどの大きさで「京」並みの性能を持つスパコンを目指しています。
 「18年末までに開発したい。人を1人雇うのと同じくらいの費用で、スパコンを導入できるようになる」

 ―どんな未来を想像していますか。
 「個人の研究や事業のためにスパコンを使えれば、全く想像できなかった新しい研究が生まれたり、自らが産業のブルーオーシャンを作り出したりできるようになる。新しい道具を使いこなすことに非常にたけた日本ならできるのではないか」

 ―なぜ1年未満の短い期間で超小型・高性能を実現できたのか。
 「門外漢だったから常識にとらわれない発想ができた。元々自分にしかできないことをやりたい気持ちが強く、新しいことをし続けていないと生きた心地がしない。また協力してくれる中小企業のモノづくりの力が欠かせない。非常に短期間で我々が要求した以上の品質で仕上げてもらえる。10社にそれぞれの部品などを頼んでも、一発できちんと組み上がり動作する。こんな国は他にない」
(聞き手=政年左貫恵)
【企業概要】
2010年に創業。プロセッサー開発を手がける。グループには積層メモリーを開発するウルトラメモリー、液浸冷却技術を開発するエクサスケールなどの企業を抱える。16年にはAI専用チップを手がけるディープインサイツを立ち上げた。
(おわり)
日刊工業新聞2017年1月4日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
医師からの転身ということで、”コンピュータオタク”にはない発想によって、世界が驚く性能を持ったスパコンが誕生するかも知れません。

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