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休眠工場もいよいよ目覚めるとき?旺盛な需要に対応せよ

関西の中小企業で操業再開が続々
休眠工場もいよいよ目覚めるとき?旺盛な需要に対応せよ

再稼働する大阪工場東大阪

 山科精器(滋賀県栗東市、大日陽一郎社長)は2017年1月中にも休眠中の水口工場(滋賀県甲賀市)を約8年ぶりに再稼働する。生産現場で深刻化する人手不足を受けて、コンベアなど自動化機器の受注が増加しているため。本社工場が手狭で増産対応が難しく、稼働再開を決めた。生産規模は当初は売上高ベースで年間1億円でスタートし、早急に同3億円に引き上げる。

 水口工場は敷地面積が約8000平方メートル、延べ床面積は約3000平方メートル。再稼働する同工場には、コンベアやハンドリング機器などの自動化設備やロボット、省力化機器を生産するほか、FA機器の受託生産なども本社工場から移管する。

 人手不足を背景に生産現場の効率化要望は高まっている。同社では今後も自動化需要は増えるとみて、水口工場での人材確保などを進めていた。

 水口工場は電気機器の生産拠点として1972年に開設。大手電機メーカーからの受託生産が急増し、ピーク時の生産量は売上高ベースで年間30億円規模に拡大した。しかし取引先の海外展開が進んだことで受注が落ち込み、09年に生産を休止し、賃貸工場として活用していた。

 同社は工作機械、船舶、発電プラント向け熱交換器や、産業機械向け注油機などの潤滑機器を生産する。最近は新事業としてカテーテルなど医療機器関連にも取り組んでいる。

 一方、フジキン(大阪市北区、野島新也社長)は、2017年2月に大阪工場東大阪(大阪府東大阪市)を再稼働する。清浄度が最高の「クラス1」の作業環境や、部品加工のマシニングセンター(MC)を導入。半導体製造装置向けの精密バルブ・継手の増産に充てる。併せて東大阪でIoT(モノのインターネット)関連の生産技術の開発機能を持たせる。

 つくば先端事業所(茨城県つくば市)、大阪工場柏原(大阪府柏原市)の主力2拠点に加えて、生産停止していた大阪工場東大阪を復活し需要旺盛な半導体製造装置向けの増産余力を確保する。

 約200平方メートルのクリーンルームを新設し、MCを10台導入。その後、IoT関連の開発品の生産方法、加工工程、品質チェックや、社内向けにIoTを活用した生産技術の開発に取り組む。東大阪への一連の投資は約5億5000万円を予定している。同社は13年の拠点再編計画に基づき、16年3月末までに東大阪の生産を停止したが、半導体向けの需要が想定以上に伸びているため、見直しを検討していた。
日刊工業新聞2016年12月29日
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
関西の中小企業で休止工場を再開するというニュースが、たまたま同じ日に重なりました。アベノミクス効果も怪しく、世界経済の先行きも相変わらず不透明なまま。それでも新たなチャンスをとらえ、再び成長軌道に乗った中小企業は少なくはありません。かつてのリーマンショックや超円高で既存の仕事を失ってしまった中小企業が、高度な技術力を生かしてよみがえった例にも出会います。モノづくり企業の底力を垣間見た瞬間は、本当に胸が躍ります。

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