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東証1部の時価総額が過去最高に―証券24社、本当の業績

15年3月期、野村はストック収入増え利益高水準。預かり資産コツコツと、もうバブルには踊らない?
 証券24社の2015年3月期連結決算は、アベノミクスの影響で、株や債券の売買手数料収入が増加した14年3月期の反動減が響き、15社が当期減益となった。手数料収入が減少する一方、証券会社が顧客から預かる株式や債券、投資信託の残高である「預かり資産残高」は全社が2ケタの伸びとなり、24社総額は322兆円に到達。手数料収入から信託報酬などストック収入に経営の軸足を移す証券会社の姿が鮮明化している。

 大手では、野村ホールディングスとみずほ証券が好調だった。野村証券は当期益が9年ぶりの高水準。特に「コンサル営業に基づくビジネスモデル変革」(柏木茂介執行役財務統括責任者)が効果を発揮しており、ストック収入は四半期調整ベースで720億円と、16年3月期の目標(696億円)を1年前倒しで達成した。みずほ証券も各利益段階で2ケタを超える増益。「銀行・証券の連携成果で新光証券と合併した09年以来の最高益」(小林英文常務)だった。

 増加が目立ったのが、株式や債券の引き受け・売り出し手数料。株高を追い風に、新規株式公開(IPO)が相次いでいることも一因だ。大和証券グループ本社の引受売出手数料は同26・8%増加、みずほ証券は同40・8%増となった。

 一方で手数料収入が収益の多数を占める中堅証券は、ほとんどが2ケタ減益だった。今後の成長を目指す上で、預かり資産を重視する戦略は大手と同様。いちよし証券の山崎泰明社長も「正面突破で預かり資産にこだわる」と力を込める。

 ネット証券は大手6社中4社が当期増益、1社が微減、1社が減少と総じて堅調だ。親会社の所有者に帰属する当期利益が同66・3%減と落ち込みが目立ったのがマネックスグループ。米国でのFX(外国為替証拠金取引)事業の一部整理損などが響いた。

 証券会社の経営のメーンターゲットは、預かり資産残高だ。預かり資産が増えれば信託報酬などストック収入が増加し、不況時でも経営が安定する。日経平均株価が2万円を超えるなど市場環境は非常に好調だが、証券会社は童話に出てくるキリギリスのように好況に甘えず、アリのようにコツコツと預かり資産残高を積み上げている。
日刊工業新聞2015年05月22日 金融面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
22日に東証1部の時価総額が591兆3007億円となり、約25年ぶりに過去最高を更新した。これまでの最高記録は1989年12月29日の590兆9087億円。日経平均は当時と比べて半値程度だが、企業数は1883社と当時の1161社から6割強増えている。特に去年はIPOバブルで沸いた。コツコツ預かり資産もいいが、IPO市場を健全に成長させてもらいたい。

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