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医療の診療支援でAIの活用は進むか。診療報酬の改定と連動?

遠隔診察などを含め政府が2020年度めどに技術確立へ
 政府は、医療分野でのIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)の積極活用を図る。AIを活用した診療支援技術を確立し、2020年度までに実用化を目指す。並行して、18年度の診療報酬改定に向け、AIや遠隔診療の扱いについて、中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)を中心に検討を進めていく。次世代を担う技術への対応を急ぐ。

 政府の未来投資会議構造改革徹底推進会合「医療・介護―生活者の暮らしを豊かに」では、AIを使って診療データなどを解析するシステムづくりや、IoTを活用した遠隔診療を診療報酬などできちんと評価すべきことを今後の取り組むべき課題として挙げている。さらに同会合は、20年度には、患者や国民が、自分の医療や健康情報などを確認したり活用したりすることや、産官学のニーズに応じたビッグデータを提供するシステムが本格稼働できるよう求めている。

 厚生労働省では、情報通信技術(ICT)やAIを活用した研究開発を「臨床研究等ICT基盤構築研究事業」や「医療のデジタル革命実現プロジェクト」により推進している。X線や病理診断へのAIの応用などが進行中だ。今後、診療報酬改定での議論と並行して、これらの技術革新が期待される。

日刊工業新聞2016年12月27日



診療データにICTを活用


 厚生労働省は、ICT(情報通信技術)を活用した保健医療サービスの構築に取り組む。ビッグデータ(大量データ)の活用や人工知能(AI)による分析、産学官のニーズに応じて保健医療データを目的別に収集・加工し提供できる環境を整える。

 19日に「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会」が提言書をまとめた。提言書では、AIを活用し、最新のエビデンス(科学的根拠)や診療データなどをビッグデータ分析し、医療現場での診療を支援する。

 データに関しては、レセプト(診療報酬明細書)に代表される、現行制度の中で活用されているデータのほか、治療成績の比較や診療プロセスの検証を行えるデータを作ることが大事だとした。

 国が主導して患者データの種類や規格を統一し、一人一人の疾病や健康状況に合わせて最適な保健医療が受けられるための基盤整備が必要だとした。

 その際にはAIなどの技術を活用したアルゴリズムを組み込み、質の向上や効率化を図ることも求めた。今後、AIやビッグデータといった最新の技術を活かしながら、保健医療分野の情報化、効率化が進みそうだ。

2016年10月20日



高血圧治療で遠隔診療を実証


 ポート(東京都新宿区、春日博文社長)は、東京女子医科大学と共同でIoT(モノのインターネット)を活用した遠隔診療の実証研究を始めた。非対面型の遠隔診療による高血圧治療が、従来型の診療と同等の安全性や有効性を得られるかなどを検証する。試験は2019年3月31日まで実施し、目標症例数で450例を目指す。

 患者は週3回以上、自分で血圧を測定し、自分のスマートフォンなどを介して測定データをサーバーに送信する。担当医はデータを参照して治療方針を決める。電話に加え、必要に応じて電子メールなどを活用し、患者に所見を伝える。

 担当医は患者との確認により内服薬を処方する。内服薬は患者宅に郵送される。遠隔診療の費用は、ポートが収納を代行する。

日刊工業新聞2016年9月8日

村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
医療分野へのIoT、AIの活用は今後さらに進んでいくだろう。現在は医師と患者が対面での診療が基本。だがAI、IoTなど技術の進歩が、今の医療の現状を追い越し、医療のあり方を大きく変えようとしている。遠隔医療が当たり前になるには環境整備が欠かせない。

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