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山形県は“シリコンバレー流”モノづくり拠点になるか?

研修を踏まえ、ベンチャー育つ
山形県は“シリコンバレー流”モノづくり拠点になるか?

山形発ベンチャー3社が成果発表会で事業戦略をそれぞれ語った

 山形県が1月から進めてきた山形発モノづくりベンチャーの創出支援事業で成果が生まれつつある。バイオ、ロボット、材料など独自技術を持つベンチャーの成長を後押しするシリコンバレー流・山形ものづくりイノベーション塾を開講しサポートしてきた。参加した企業3社が米国・シリコンバレーでの研修を踏まえ、それぞれ事業化に乗り出した。

 シリコンバレー流・山形ものづくりイノベーション塾は、シリコンバレーに立地する世界的な研究開発機関、SRIインターナショナル(旧スタンフォード研究所)の協力を得た取り組み。SRIと関係を持つ事業委託先のNPO法人ワイ・リサーチ・イノベーション(山形県米沢市)が運営を担った。

 11月末に山形市内で開かれた成果発表会(主催=山形県、ワイ・リサーチ・イノベーション)では、8月にシリコンバレーで研修を受けた県内ベンチャーのメトセラ(鶴岡市)、シンフォディア・フィル(米沢市)、イムザック(山形市)の3社が事業化への取り組みを報告した。

 慶応義塾大学先端生命科学研究所(鶴岡市)発ベンチャーのメトセラは3月に会社を設立。線維芽細胞による心筋細胞の機能性を高める技術の事業化で、SRIからも高評価を得た。成果発表会に訪れたSRIエグゼクティブ・ディレクターのクロード・レグリーズ氏は「技術は大きな可能性を感じる。チームとしても期待したい」と評価した。次のプロセスに向けて動物実験も進行している。

 シンフォディア・フイルは、独自のセンシング技術で高糖度トマトの生産革新に取り組む。SRIによる研修で「市場ニーズを明確化した」(上田賢一郎社長)。国内で実証試験先の開拓を進め、2018年からの販売を目指す方向性を示した。

 イムザックは曲面への超微細加工による表面改質など独自の超精密加工技術を持つ。光学レンズ、光学素子における曲面金型への反射防止構造加工装置の販売や反射防止構造加工の事業化に踏み出している。澤村一実社長は「シリコンバレーで直接投資家に話し、自信につながった。次のステップに向けてサンプルの作製を進めている」と報告した。

 イノベーション塾は3段階の研修が組まれ、1月の基礎研修に県内12チームが参加。3月の発展研修で6チームが選ばれ、8月に今回の3社が海外研修に取り組んだ。事業を担ったワイ・リサーチ・イノベーションの小野寺忠司代表理事は「地域でイノベーションを生み出す仕組みづくりが重要になっている」と指摘する。県は17年度に向けて、新たなモノづくりベンチャー創出支援事業を検討する構えだ。
(文=山形支局長・大矢修一)
日刊工業新聞2016年12月16日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
慶応義塾大学先端生命科学研究所発の人工クモ糸開発しているベンチャー「スパイバー」も鶴岡市に拠点を持ちます。鶴岡市内の「サイエンスパーク」内には宿泊滞在複合施設「サイエンスパークヴィレッジ」も着工。注目が高まっています。

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