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うつ病になった人が仕事中に多く起こした行動

専門医は語る
うつ病になった人が仕事中に多く起こした行動

患者が医師に診断を迫るような国民性がない日本(写真はイメージ)

 プレッシャーやストレスと闘いながら業務をこなすビジネスパーソンにとって、うつ病は身近な疾患とも言える。しかし日本企業はその対策が十分ではないことが製薬会社の調査で浮き彫りになった。患者に対する薬物治療はもちろん重要だが、病気の兆しを把握して重症化を防ぐ施策が求められる。

 【休職は平均79日】
 働く人の10人に1人がうつ病を経験。うつ病になった場合の平均休職期間は79日で、復職後も仕事をこなすのに時間がかかる―。ルンドベック・ジャパン(東京都港区)が2月にまとめた調査では、職場におけるうつ病の影響がさまざまな側面から明らかになった。

 これらの結果からは、うつ病に伴う経済損失の大きさが浮かび上がる。ただ日本企業はそれを十分認識できていない。同調査によると、うつ病の同僚に対して積極的に援助を申し出た人の割合は16%。英国は53%、中国は42%で他国に比べかなり低い。会社のうつ病対策制度に満足している管理職の割合も、調査対象国の中で最下位だった。

 【組織風土改革も】
 うつ病を未然に防ぐには、発症の兆候をつかむことが必要。この意味で期待されているのが、従業員50人以上の企業で12月に始まるストレスチェックだ。改正労働安全衛生法施行に伴って義務化される。関連製品を手がけるアドバンテッジリスクマネジメント(ARM)は中堅・中小企業からの需要を見越し、代理店を増やすなどして対応する。

 ただし「チェック実施自体が目的になってはならない」(神谷学ARM取締役常務執行役員)。問題を抱えている人をカウンセリングや研修に導くことが必要になるが、人事評価への影響を恐れて腰が引けるケースは多いとみられる。組織風土改革も含めた対策が欠かせない。(随時掲載)

 【専門医は語る/国際医療福祉大学医療福祉学部教授・上島国利氏】
 ルンドベックの調査によると、16―64歳の10%がうつ病の経験があると回答している。米国は23%、英国は27%で諸外国に比べるとかなり低い。ただ日本では、正確な病名を告知しない傾向があった。患者が医師に診断を迫るような国民性がないことも影響していると思う。

 気分の落ち込みなどが病気から来るものだという理解は、(一般のビジネスパーソンの間で)まずまず浸透しつつある。一方で集中力の低下や忘れっぽさをうつ病の症状と認識している人は少ない。個人差があるため、さまざまな症状をより良く理解することが職場におけるうつ病を考える上で重要だ。

 今年末から企業のストレスチェックが義務化されるが、うつ病予防から発症後の職場復帰対応まで包括的なメンタルヘルス対策を充実させる必要がある。(談)

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日刊工業新聞2015年03月31日 ヘルスケア
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
男性と女性でも行動パターンに違いがあるように思うが。

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