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セーレン、自動車用シート素材でグローバル展開加速

メキシコ工場の生産能力2倍に。素材から縫製まで一貫生産強み生かす
セーレン、自動車用シート素材でグローバル展開加速

増産を検討するクオーレ

 セーレンは中核事業の自動車シートに加工する合成皮革「クオーレ」を増産する方向で検討に入った。メキシコ工場の製造設備を増強し、クオーレの生産能力を月間20万メートルから2倍の同40万メートルにする。2017年初頭に最終判断するが、北米を中心に自動車シート需要は堅調な伸びをみせており、追加投資に踏み切る公算が大きい。投資額は10億―15億円と見られる。

 セーレンは北米やメキシコ、中国など8拠点で自動車シート材を生産しており、世界シェアは約15%と首位。ファブリック(織編物)と合成皮革のクオーレをシート素材の主力に据え、素材から縫製まで一貫生産する。

 増産は16年6月に稼働したメキシコ工場(グアナファト州アバソロ市)で検討する。今ある1本のクオーレの生産ラインを2本にする計画。17年後半の稼働を見込む。

 メキシコ工場の増強後は、同社全体の生産能力が月間100万―110万平方メートルから約20%増える見込み。増産分はメキシコ国内で販売するほか米国にも輸出し、日系自動車部品メーカーの増産ニーズに対応する。

 クオーレは本革に比べ自動車1台当たり約2キログラム軽く、価格は標準品で約半分。車体を軽くして燃費改善を目指す自動車メーカーに訴求力が高く、北米や中国を中心に販売を伸ばしている。

ファシリテーター・峯岸研一氏


 染色大手でもあるセーレングループは、カーシートを中心とした自動車内装材で好調を続けていますが、同時にグローバル化を加速しています。その自動車内装材を支えるのが皮革志向の強まる中でニーズが高まっている合成皮革「クオーレ」シリーズです。国内の自動車内装材業界は染色加工メーカーを含め順風満帆とは言えません。自動車生産台数の伸び悩みに加え、厳しいコスト効率化要求もあり収益確保に苦慮しているからです。

日刊工業新聞2016年12月7日
峯岸研一
峯岸研一 Minegishi Kenichi フリーランス
同社グループは合成皮革「クォーレ」に加え、人工皮革「パールスエード」、織物、経編みと丸編みと多様なアイテムで展開していますが、最大の強みはグループで原糸生産から染色加工に至る一貫生産体制を活かして事業展開していることです。染色加工メーカーの大部分はティア2かティア3として完成車メーカーとの取引関係が希薄ですが、同社完成車工メーカーに深く食い込んでおり、今やカーシート基布で国内最大メーカーとしての地位を確立しました。セーレンが充実した研究開発体制をベースに、グローバル化を一段と推進するのか、同時に国内シエアをさらに高めて行くのか、今後の動きから目が離せません。

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