「ひとみ」運用断念から8か月、日本の宇宙開発は正念場迎える

事故は基本的な部分のミス。失った信頼を取り戻せるのか

ひとみのイメージ(池下章裕氏提供)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月、X線天文衛星「ひとみ」の運用を断念した。日本側が310億円を負担するこの一大プロジェクトには、米航空宇宙局(NASA)をはじめとする各国の研究機関や多くの企業が関わっていた。宇宙から飛んでくるX線の観測により巨大ブラックホールの謎の解明など、天体物理学分野の大きな成果が期待されていただけに、関係者が受けた衝撃は大きい。  三菱重工業とJAXAは2月、国産ロケット「H2A」でひとみを打ち上げた。だが3月下旬に地上とひとみとの通信が途絶。その後JAXAは通信の回復を試みるが、そのかいなく約1か月後の4月28日、JAXAはひとみの運用を断念すると発表。打ち上げ後、わずか1か月でひとみはその役割を終えた。  事故は人為的なミスによるところが多く、事故の検証が進むにつれプロジェクト内のずさんな体制が浮き彫りになった。  「衛星の大型化により従来の管理体制が行き渡らなかった」(久保田孝JAXA宇宙科学研究所・宇宙科学プログラムディレクタ)といった点を踏まえ、JAXAはプロジェクト運営の改革案を文部科学省の事故調査委員会に提出。プロジェクトの管理責任者であるPMと、科学成果に関する責任者であるPIを一人で担う体制から、それぞれ別の担当者にすることが柱だ。  さらにJAXAと企業との役割の明確化、重要事項の変更記録の文書化を徹底することなどを明記した。  同研究所の常田佐久所長は、「今回の事故は基本的な部分でミスが起きた。短期と長期の時間スケールでシステムを改善していきたい」と改革に向けた取り組みを進めることを強調した。   事故発生から8か月たった現在、日本側が241億円を負担し、ひとみの代替機を開発する計画が進行している。事故の反省を生かし、失った信頼を取り戻せるのか。日本の宇宙開発は正念場を迎えた。 (文=冨井哲雄)

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