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「ALWAYS 続・三丁目の夕日」プロデューサー死後、残った会社倒産

代表死去で営業困難に、忍び寄る後継者問題
 昨年末に亡くなった映画プロデューサーの山際新平氏。2002年公開の「明日があるさ THE MOVIE」や、07年公開の「ALWAYS 続・三丁目の夕日」といったヒット映画にプロデューサーなどとして参画してきた。その山際氏が代表を務めていたクロニクルは、11月2日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。

 09年10月の設立以来、映画制作を中心に、テレビドラマやアニメーション制作などを手がけてきた。山際氏の業界経験や人脈を背景に、15年9月期には売上高約1億9000万円を計上していたが、山際氏の死去に伴い実質的な活動継続が困難となったことで事業継続を断念した。映画プロデューサーという特異な才能で経営を維持していたという事情が後継者の育成を難しくした結果とも言える。

 また、11月25日、東京地裁より破産手続き開始決定を受けた信山社も、代表の死去が引き金だった。書店街・神保町で人文・社会科学系専門書店として有名な「岩波ブックセンター」を運営していたが、出版不況の影響から業績は低迷、財務面でも債務超過が続いていた。そうした中、10月12日に代表取締役会長の柴田信氏が死去し、事業停止を余儀なくされた。

 帝国データバンクが1月に発表した「2016年全国社長分析」によると、社長の平均年齢は15年で59・2歳と過去最高を更新。東北などの地方ほど平均年齢が高い傾向となった。企業の代表者の高齢化が進んでおり、「後継者問題」は企業経営にとって大きなリスクとなりつつある。なかでも、代表の才能や手腕、人脈で経営が成り立っているような企業では、事業継承が難しいケースが多い。特に中小企業においてはその傾向が顕著と言える。代表者の年齢や後継者の有無は、与信管理においても押さえておきたい重要なポイントである。
(帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2016年12月6日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
どの業界も中小企業の後継者問題は深刻です。

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