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富士通がオムロンの工場で実証したIoT、「可視化」をウリに販売へ

単純にみえるが、分かりやすさにこだわった仕組みに
 富士通は製造工程の稼働状況を1製品ごとに線形グラフで可視化するIoT(モノのインターネット)ソリューションの販売に乗り出す。製造設備の稼働実績のログ(履歴)データなどを基に、モノづくりの流れを工程ごとに時間軸に沿ってソフトウエア画面上で見える化する。通常は検出されない許容範囲のエラーなどの改善点を熟練工でなくても簡単に見つけ出せる。今後3年間で3000ライセンス(使用許諾権)の販売を目指す。

 オムロンの草津工場で共同実証したIoT活用による現場革新の取り組みをソフトウエア化して、「ビジュアライン」のブランド名で近く発売する。

 センサーによるリアルタイム検知のような高価なIoTシステムや専門技術者を必要とせず、既存のログデータがあれば、現場改善活動と一体で日々使いこなすことが可能。価格はライン当たり基本ライセンスが月額7万9000円(消費税抜き)から。適用業種は問わないが、「段取り代えの多い多品種少量の生産ライン向けが効果が出やすい」(富士通)という。

 線形グラフは時間を縦軸、工程を横軸となり、導き出す線の1本ごとが1製品の稼働状況を示す。線の乱れや線同士の開き具合から、工程の遅延などが一目で読み取れる製造工程で生じたアラート(警告)などをバブル(丸形)チャートとして線形グラフに重ね合わせることができる。

 オプションで、現場で撮影した映像を時間軸で関連付けて画面上に表示する機能も提供。異常時に何が起きたか検証したいときは、グラフ上のポイントをクリックすれば遡って映像を再現する。映像データは海外工場の監視・管理にも役立つ。

ファシリテーター・八子知礼氏


 富士通が満を持して販売開始するのは、オムロンの草津工場での実績あるソリューションとして広く知られる生産ラインの生産性を可視化できるもの。よくよく考えると比較的単純なソリューションに見えるが、分かりやすさにこだわったよくできた仕組みだと言える。

 加えてそもそもこれくらいの可視化もまだまだ実現していない生産ラインがほとんどなのである。どこがボトルネックなのか、どこがトラブルの発生源なのか、実際のラインでは個々の設備担当は自分の担務範囲は認識していてもライン全体での最適化には興味がないかそのような評価指標になっていないことも多いからだ。

 だからこれまではそれら課題発見と解決が属人的で時間がかかっていたところをこのソリューションによって30%以上短縮できていると聞く。
<続きはコメント欄で>
日刊工業新聞2016年12月5日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
 まずはどこから手を付けて良いかわからない企業にとって可視化は通らなければならない最初のゲートであり、既に実績あるソリューションとして1つの解決策になる可能性があることは間違いないだろう。

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