ニュースイッチ

400年の伝統「八重山ミンサー」を現代風のバッグに

革新を受け継ぐ「あざみ屋」が新たな顧客との接点づくり
400年の伝統「八重山ミンサー」を現代風のバッグに

伝統的に藍色だった八重山ミンサーをカラフルなファッション製品として展開

 あざみ屋(沖縄県石垣市、新賢次社長)は、沖縄県南西部の八重山地方に伝わる木綿の織物「八重山ミンサー」の新たなファン獲得に取り組んでいる。ミンサーは絣(かすり)の一種で、400年近い歴史を持つとされる。同社は伝統を維持しつつ現代的な手法を取り入れることで、日常生活に使ってもらおうと提案を続ける。

 八重山ミンサーは、めんさ(綿紗、綿狭)が語源と言われる。特徴は絣が五つと四つに並ぶ模様。女性が帯として織り「いつ(五つ)の世(四)までも末永く」と思いを込めて愛する男性に贈ったと伝わる。八重山の織物には「八重山上布(じょうふ)」もあるが、琉球王朝への献上品だった上布に対し、庶民に親しまれたのがミンサーだった。

 あざみ屋は八重山ミンサーのメーカーとして、糸の染色から織り、製品化まで一貫して手がける。石垣市内で工房と展示販売施設を兼ねた「みんさー工芸館」を運営し、普及に取り組んでいる。

 現在のアイテム数は約600点。主なターゲットは40―70代の女性だ。主力のバッグ類のほか、ウエアや小物など服飾分野がメーン。男性向けにも“五、四”から名付けた「ITUYO(イツヨ)」ブランドでシャツなどを展開する。
五つと四つの絣模様が八重山ミンサーの特徴


 近年注力するのがインターネット通信販売。2013年に始め、3年間でネット経由の売上高は3倍に伸びた。全体の売上高からすれば割合はまだ低いが「単月売り上げが100万円を超える月が出てきた」(東大浜歩営業課長)と調子が上がっている。

 ネットは販売チャンネルとしてだけでなく、顧客とのコミュニケーションツールとしても機能している。ネットで商品を見て実店舗を訪れる例があるほか、廃盤商品のリクエストが寄せられ、復刻につながったこともある。

 課題は売り上げの伸びに加えて、顧客との接点づくりだ。石垣島は外国人観光客が増加しているが「売り上げも増えるわけではない。ターゲット数は増えていない」(同)という。

 そのためタペストリーなど新分野へ進出するとともに、15年からは展示会に積極出展している。これまで国内のファッションやインテリアの展示会に出展。17年はギフト関連への出展を計画する。

 同社は「現代の名工」である新絹枝氏が創始者。絹枝氏は藍色が基本だった八重山ミンサーにさまざまな色を取り入れ、従来の帯以外にも製品を積極的に開発してきた。ファッションデザイナーとパリコレクションに参加したほか、地元出身の歌手・夏川りみさんが「NHK紅白歌合戦」に出場した際、その舞台衣装を製作した。ミンサーを「復活させた」とも言われる、業界では革新的な企業だ。

 地域に根ざした工芸品は、地元から愛される商品や値付けも必要になる。すそ野を広げて頂点を高めつつ、ルーツを失わない市場展開が求められている。
(文=那覇支局長・三苫能徳)
2016/11/11
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
八重山諸島は石垣島や西表島などから成っています。八重山ミンサーには記事にもあるように、物語性やロマンスが背景にあります。商品をアレンジすることも必要ですが、ストーリーを大事にしてほしいと思います。

編集部のおすすめ