自律型ロボットが大活躍! IoT活用次世代農業の可能性とは?

<情報工場 「読学」のススメ#19>『IoTが拓く次世代農業 アグリカルチャー4.0の時代』(三輪 泰史/井熊 均/木通 秀樹 著)

**課題山積の日本農業を「逆転の発想」で復活させる  インターネットの黎明期を支えたAOL(アメリカ・オンライン)の共同創業者、スティーブ・ケース氏は、著書『サードウェーブ』(ハーパーコリンズ・ジャパン)で、インターネットが三つの「波」を経て発展していると分析している。基盤づくりの「第一の波」、その応用である「第二の波」、そしてまさに今差しかかろうとしているのが「第三の波」だ。それは、これまでITとは関わりの薄かった領域でインターネットが活用される段階とされている。  もともとインターネットは「道具」である。くだけた言い方をすれば「使われてなんぼ」のものだ。「第三の波」で、これまで関係が薄かった領域で使われるということは、どんな領域でも使える道具にまでインターネットが成熟したことを意味するのではないか。  そのインターネットの成熟ぶりを端的に示すのがIoT(Internet of Things:モノのインターネット)だ。「第三の波」の最初の大波は、ドイツなどが先行する「インダストリー4.0」といえる。工業生産プロセスにIoTによる自動制御を大幅に取り入れ、究極の効率化をめざすものだ。  インダストリー4.0と同様の動きはアメリカでも進んでいる。日本は高度なセンサー技術などの“強み”があるにもかかわらず、ムーブメントからは出遅れている感が否めない。しかし、発想を転換することで、インダストリー4.0に続く「大波」を起こせる可能性がある。それが「アグリカルチャー4.0」、すなわち農業分野でのIoT活用だ。  『IoTが拓く次世代農業 アグリカルチャー4.0の時代』(日刊工業新聞社)は、その具現化への青写真を見せてくれている。3人の共著者はいずれも日本総合研究所創発戦略センターに所属。井熊均氏は同センター所長であり、三輪泰史氏、木通秀樹氏はシニアスペシャリストとしてそれぞれ農業ビジネス戦略論、社会システム構想などを専門としている。  日本の農業がさまざまな課題を抱えていることは、ほとんどの人が認識しているのではないだろうか。最大の問題は、農業が「儲からない」ことだ。兼業農家を除いた農業従事者の年収は概ね200万~300万ほど。しかも農作業に対する3K(きつい、きたない、かっこわるい)のイメージも根強い。いきおい日本の農業は慢性的な後継者不足、人手不足に苦しむことになる。  もう一つ大きな問題として、各々の農業従事者が使用する農地が小さいことが挙げられる。平地が少ない日本特有の地理条件から、小面積の農地が点在している。このことが、機械化による効率化の足かせになっている。  同書では、こうした問題点に対し「逆転の発想」をしている。つまり、課題が多い産業だからこそ、それを解決しようというモチベーションが生まれる。また、農業就業人口の減少を人手不足と捉えるのではなく、「一人あたりの農地やマーケット規模が拡大する」とみる。IoTを活用して人手のかからない効率的な農業が実現できれば、一人あたりの広い農地で収益性を大幅に向上できる。  『IoTが拓く次世代農業 アグリカルチャー4.0の時代』が提言する次世代の農業モデル「アグリカルチャー4.0」は、大きく三つのシステムで支えられる。一つは各種センサーによる、農地や作物の状態のモニタリングシステム。二つめは、最適な生産・販売計画を導く全体管理システム。そして三つめが自動・半自動で農作業を行う農業機器・設備だ。これには、農業ロボットや自動運転農機、農業ドローン、自動化を進化させた次世代植物工場などが含まれる。  これらのシステムの中核に置かれるのが小型自律型ロボット「DONKEY」だ。センサーが捉えたデータや遠隔地からの制御信号をキャッチし、自動で作業をこなす。さまざまなアタッチメントを取り替えることで、多種多様な作業にも対応できる。最大のポイントは小型軽量であることだ。従来のトラクターなどは小面積の農地が点在するケースでは、非常に非効率だった。農地と農地の間の移動に時間と燃料が費やされる。小型で持ち運びがたやすいDONKEYであれば、こうした問題をクリアできる。  このようなシステムが実現されれば、日本農業が抱える諸問題を解決するだけでなく、システム自体を「輸出」することも可能だと、同書は主張している。システムの中に、日本が培ってきた高品質な作物をつくる生産ノウハウを組み込むことができる。インターネットを活用したシステムだけに、遠隔操作やアドバイスをすることで、日本の「匠(たくみ)」の技を生かすこともできる。生産物ではなく、日本農業の“強み”を海外に売ることができるのだ。  「3K」を解消し、すべての農業従事者が「儲ける」ことのできる「アグリカルチャー4.0」だが、成功させるためには、各パーツおよびシステム全体の標準化が欠かせないだろう。そのためには、モノのネットワークだけでなく「人」のネットワークも重要になる。旧来の利害関係をクリアにした上で、新しい農業のグランドデザインを描ける人材とその行動が、日本農業の未来を拓くカギを握っている。 (文=情報工場「SERENDIP」編集部) 『IoTが拓く次世代農業 アグリカルチャー4.0の時代』 三輪 泰史/井熊 均/木通 秀樹 著 日刊工業新聞社 184p 2,300円(税別)

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