「働き方改革」は暮らし方を見直すことにつながる

経産省、兼業・副業の優良事例集を作成

 経済産業省・中小企業庁は本年度内をめどに、兼業・副業に関する優良事例集を作成する。兼業・副業の促進を通じて創業や新事業進出の増加につなげるのが狙い。開業率の向上やイノベーション創出といった具体的成果を示すことにより、個人と企業の双方に対して時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を促す。  優良事例の対象となるのは、兼業・副業を通じて創業・起業している個人と、創業・新事業創出を奨励している企業。合計10事例程度を選び出して紹介する。  兼業・副業の促進に関しては、イノベーションの創出や人材確保、可処分所得の増加などにつながる可能性があり、経済成長を後押しする方策として注目が集まっている。兼業・副業の促進による効果の評価指標としては開業率があるが、政府は「日本再興戦略」で10%台の開業率を目標に掲げている。  ただ業務効率の低下や社内情報の漏えいといったデメリットが生じる懸念があり、企業の実施例は依然少ないのが現状だ。近年、日本の開業率は4―5%で推移しており、目標達成には取り組みの一層の強化が求められている。  総務省統計局の2012年の「就業構造基本調査」によると、副業を希望する就業者は約368万人。これらの希望者が創業を目指すことにより、開業率の向上が期待できる。  こうした現状を踏まえて経産省は、兼業・副業に関する課題抽出や効果の検証を目的に、有識者らによる研究会を10月に発足させた。優良事例集の作成・周知に加えて、研究会での議論をもとに今後の支援策を検討していく方針だ。 日刊工業新聞2016年11月17日  サイファー・テックにて地域活性化活動を行っていた吉田基晴社長だが、本格的に事業化するため、「あわえ」を立ち上げた。  現在あわえで行っている事業は、「コト」(文化や地域風土の継承)、「ヒト」(人口減少の歯止め、地域交流)、「カネ」(地域経済の活性化)の3つの軸を中心に動いている。  「コト」分野では、地域の記憶を次世代に引き継ぐためのフォトストック事業「GOEN」。個人や企業が所持している古い写真とともに、情報をヒアリングして収集。写真をスキャンしてデータ化し、クラウドサーバーで共有する。現在約2000枚が集まっており、約300枚がクラウドサーバーにアップされている。ただ写真をストックするだけでなく、「いつどこでとったのか、どういう写真か」をヒアリングすることでコミュニケーションが生まれ、地域文化への理解も進む。  GOENは近隣の海陽町など、他の地域へも広がっている。地域おこし協力隊が地域とコミュニケーションを取るためのきっかけになったり、インターンシップでも使用されている。 (「GOEN」でのヒアリングの様子)  「ヒト」分野ではサテライトオフィス誘致、移住のサポートを行っている。「エリアリノベーション」として地域のある一帯に集中させて古民家を改修、オフィスや移住者のための住居にしている。これにより地域の変化をより感じやすく、地域活性のアンテナのような場所となる。  エリアリノベーションの第一弾として、あわえ本社を2014年に開設。明治時代に建てられた銭湯をリノベーションし、オフィスでありながら地域の人が集まれる場となっている。さらに第二弾として、サテライトオフィス体験施設「Work and Play+ 戎邸」を開設。サテライトオフィスの開設を考えている企業が体験できるよう、2日間から借りることができる。オフィス誘致の間口を広げるとともに、誘致後のミスマッチを防ぐ役割もある。  美波町には現在県内最多の12社のサテライトオフィスが進出している。サテライトオフィスを誘致するにあたり、問題となっているのが働く人の住居。空き民家はたくさんあるのだが、貸したい地元の人と、借りたい移住者のニーズがすれ違ってしまうことが多い。そこであわえが両者のマッチングを行い、現地での調整役となっている。現在、どのサテライトオフィスでも採用を強化する動きにあり、住居のマッチングは必要性を増している。  「カネ」分野では、地元産品のブランディング、6次産業化を推進。その1つとして、2015年2月に、地元のブランド鶏「阿波尾鶏」の専門レストラン「odori kitchen」をオープンした。レストランに併設して地元産品やその加工品などを販売するコーナーを設け、一次産業品を六次産業化する取組みに挑戦中である。  レストランのシェフを務める林嗣大氏も、東京から移住してきた。自分の店を持ちたいと考えていたところ、たまたま吉田社長と出会い美波町に店を構えることになったという。都会ではできなかったライフスタイルを確立できた一人だ。 <次のページ、地域に生かされながら地域を生かす>  サテライトオフィスの誘致など、あわえの活動と同じようなことを行政が行っている例も多い。しかし、ビジネスで行うことにこそ強みがあると吉田社長は考えている。「行政であれば政策がいつ変わってしまうとも限らない。コト、ヒト、カネの3軸を回し地域で、ビジネスとして確立させていくことが永続性につながる」。  美波町の課題解決のための事業をビジネス化することは、他地域の課題を解決する可能性も持つ。「あわえがやっていることは地域の課題=『病因』を見つけ、それを解決する事業=『新薬』を開発すること。『新薬』に汎用性を見出すことで、同じような『病因』を持つ他地域に横展開できる。『ジェネリック薬』を作ることに似ています」(吉田社長)。  あわえの事業は近隣の海陽町へと広がっている。今夏、初の試みとしてフェリス女学院(神奈川県横浜市)より6人の学生が3泊4日のインターンシップに訪れ、GOENを使いながら地域課題のヒアリングを行った。同大学国際交流学部の春木良且教授は「地域のコアコンピタンスの発見と課題の認識という、都市部の学生が普段感じないことを体験し、考えるいい機会になった」と話す。  他地域へ広げていくには、その地域に吉田社長のように駆動役となるキーパーソンが必要不可欠だ。しかし、どの地域でも強力な人材がいるわけではない。その場合、「町が無理でも、小さな単位から動かしてみては」と吉田社長は話す。「地域の魅力を見つけられる人はどこにでもいるはず。広報のように、内外に発信していくことが必要です」(吉田社長)。 (サテライトオフィスの1つ、大阪のIT企業「鈴木商店」)  一方、ビジネス化するにあたり難しい部分もある。GOEN、サテライトオフィス誘致など商品に前例がないため、どういう価値に対してどのような価格設定にするか決めにくいのだ。まずは市場に出してみて、反応を見て調整や摺合せを行っていくことになる。  地域に魅力を感じる人が来てくれているということが前提にあるが、移住者が地域に溶け込めないという問題は起こらないのだろうか。「移住者に地域での役割ができる、ということが大きいと思います。  例えば、美波町には江戸時代から続く秋祭りで『ちょうさ』と呼ばれる太鼓屋台を担ぐ伝統行事があります。地域の人はこの行事を本当に大切にしているのですが、今回その中心役に移住してきた若者が選ばれました。また釣りやサーフィンをする社員が多いのですが、地域の人たちと趣味を通じて仲良くなることも多いです。地域柄もあるでしょうが、遊び人が多いんです」と吉田社長は笑う。地域の人が魅力を感じている部分に共感することが、地域に溶け込む一歩につながる。  あわえは地域活性のための事業を行っているが、あわえもまた、地域の人たちに生かされている。GOENは、地域の人たちの写真提供協力と、記憶がなければ成り立たない。移住者のための古民家賃貸や改修も、権利者が地域にいない場合や分からなくなってしまった場合も多く、近所の人に情報を聞く。odoriでは手先の器用な方がテーブルを作り、建屋の改修をしてくれている。夕方になると何となく集会所に人が集まり、釣った魚やおかずを持ち寄って宴会が始まる。入社して半年もたたない社員も自然に混ざっている。  「『あわえ』とは美波町の方言で『路地』という意味。自然と人が行き交い、活気が生まれる場をイメージしています。ここで生まれた活気を他の地域へも広げていきたい」(吉田社長)。 ※内容、肩書きは当時のもの ニュースイッチ2015年09月16日

続きを読む

特集