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今日からJIMTOF、工作機械のIoT化はどこまで進むのか

各社が生産・保守・管理の効率化でサービス
今日からJIMTOF、工作機械のIoT化はどこまで進むのか

前回2014年のJIMTOF

 工作機械各社はIoT(モノのインターネット)技術を活用したサービスに乗り出す。牧野フライス製作所は2017年1月に顧客の自社機をネットワークで監視し、生産効率を高めるサービスを開始する。ヤマザキマザックは不正アクセスを遮断し、工作機械などの設備をネット化する装置の国内投入を決めた。DMG森精機はIoTを活用した自社機の5年保証を17日始める。生産や経営を効率化する技術としてIoT普及に拍車がかかりそうだ。

 牧野フライスが始めるのは金型メーカー向けIoTサービス。常時接続した顧客の機械を監視、分析し、故障を予防する。故障時は稼働データなどから原因を特定しやすくし、復旧までの停止時間を短くする。米国のIT企業と開発した。

 DMG森精機は2年間の無償修理・保守を5年間に延長するサービスを始める。日本マイクロソフト(MS)とも、工作機械から収集した生産データなどを安全に管理、運用する技術で協力。17年春にも顧客に提供する。

 ヤマザキマザックは米シスコシステムズと16日、IoTに関わる協業の強化を発表。共同開発で米国に先行投入し、17日に日本でも発売するネット化装置「マザック・スマートボックス」を使い、工場のビッグデータを収集・解析するクラウドサービスを開発する。山崎智久社長は「製造業のIoT化を推進していく」と語った。

 一方、オークマは米ゼネラル・エレクトリック(GE)と協業する。GEグループのIoT基本ソフト(OS)「プレディックス」を工作機械に組み込み、生産データをクラウドに集積、分析する。ジェイテクトは他社製機器とのネット接続を容易にしたプログラマブルロジックコントローラー(PLC)「TOYOPUC」を軸に、工場のネット化のソリューション展開を進める方針だ。

 IoTを活用した具体的なサービスは従来、構想段階だった。サービスの開始で各社の開発も加速しそうだ。

DMG森精機・森雅彦社長インタビューは



 ―機械本体やソフトウエアなどを一体提案する「テクノロジーサイクル」を21種類披露します。
 「大型5軸加工機や新コンセプトの立型マシニングセンター(MC)などの最高の機械ばかりを自信を持って出す。ただ、最も重要なのは機械単体より、テクノロジーサイクル。SME(中小規模の事業者)がスマートファクトリーにするためにマイクロソフト(MS)と個別交渉したり、ロボットを直接購入したりするのは難しい。それらを当社がまとめ、顧客の面倒を全部代わって対応する。前面に訴えたい」

 ―工作機械の販売方法は転換期です。
 「今までの機械販売は、例えば車を買ったらタイヤが付いてなくて、用品店で買ってくださいということ。高剛性、重切削を誇っても工具やホルダーがなければ機能しない。『それはご自身でどうぞ』というビジネスはもう終わり。DMG森精機なら顧客と加工実験し、最適な加工設備と加工条件を見つけ、据え付けから生産の立ち上げまで一緒にやる。そう評価されてきた」

 ―IoT(モノのインタ―ネット)活用のサービスとして、5年間の無償修理・保証を17日始めます。
 「スマート化というのは、5年保証で始めるようにモニタリングの方から。今はモニタリングだけがスマート化と言われがちだがそれだけではない。加工、計測、ハンドリング、モニタリングの四つだ。ブースでは初出展の8機種、熟成された3D装置などを披露する。ブース全体をIoTにしていて、展示するのはスマートマシン、ブースはスマートファクトリーのイメージ。技術の面白いお祭りにしたい」

 ―2017年の市況をどう読みますか。
 「日本工作機械工業会(日工会)の受注額は16年より下がるだろう。(1ドル=100円といった円高安定ならば)1兆2000億円。最終的には1兆1000億円くらいだろう。18年は今年並みの1兆3000億円に戻るかも知れないが、来年はちょっと厳しい」
【記者の目】
 製造業は変革期にあるように思う。端的には金属積層造形機やIoT、人工知能(AI)といった新しい製造装置やシステムの誕生、進化があり、これらが工作機械ユーザーの仕事のあり方を大きく変えるかもしれない。同社の独DMG MORIとの一体化、一部直販化、テクノロジーサイクルなど一連の施策には、変わりゆく製造業の中で、メーカーとして誰よりも早く、深く変化対応に挑む強い意志を感じる。

(聞き手=六笠友和)

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日刊工業新聞2016年11月17日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
工作機械のIoTは、顧客企業の経営効率化にも多大な貢献をするだろう。しかし、部品メーカーが集積している日本では、産業全体でサプライチェーンを結ぶIoTによりアイドリングタイムや在庫の削減を実現するところまで行きたい。

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