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セームページとGoodsに優秀賞、MITベンチャーフォーラムがビジコン開催

ファイナリスト6人のうち4人が女性、その起業家パワーにも期待
セームページとGoodsに優秀賞、MITベンチャーフォーラムがビジコン開催

POILYの事業内容を説明するGoodsの石川さん

 日本MITベンチャーフォーラム主催による第16回ビジネンプランコンテスト&クリニックの最終審査発表会が12日午後、都内で開かれた。この日のファイナリストとしてコンテストに挑んだのは、北は山形から南は福岡まで新進気鋭の6チーム。10分間のプレゼンテーションと質疑応答をもとに審査が行われた結果、優秀賞にはGoods株式会社と株式会社セームページの2チームが選ばれた。受賞チームは以下の通り。

【最優秀賞】該当なし
【優秀賞】
・株式会社セームページ:シェアリングエコノミーで実現する手ぶら観光サービス Tebura
・Goods株式会社:お客様の再来店と店舗の成長を支援するマーケティングツール「POILY」
【企業賞・マイクロソフト賞】
・Goods株式会社:同上
【企業賞・漆間総合法律事務所賞】
・株式会社エムスクエア・ラボ:JapanAgriTechで世界を救う事業
・株式会社3D!:3D技術で理想の歯科治療を実現する
【日本MITベンチャーフォーラム正会員特別賞】
・株式会社3D!:同上

 優秀賞に選ばれたセームページは、旅行客が重い荷物を主要駅近くにある提携先の事務所、居酒屋、レストランなど預かってもらって、手ぶらで観光を楽しめるようにするサービス。目的地に着いた旅行客は、まずホテルに旅行カバンを預けに行かなくてもよくなり、時間の節約につながる。ウーバーやエアビーアンドビーと同じようなシェアリングエコノミーの仕組みを使っていて、ダウンロードした専用アプリの地図上に契約した預け先が表示される。HISとも協業していてその観光案内所も預け先になっている。現在の提携先は都内11店舗、大阪・京都・奈良など関西15店舗だが、年内には都内で100店舗まで拡大する予定。

 料金は1000円で30%が手数料としてセームページに、70%が荷物の預け先に行く仕組み。コンテストのプレゼンででは社長の高木昭博さんと奥様が忍者の格好で壇上に登場し、ちょっとびっくり。英語もプログラムもこなす高木さんによれば、外国人旅行者には日本のニンジャのインパクトが強いと思い、この格好で仕事をしているのだという。このほか、損保会社と組んだ荷物の保険や配送サービスも検討中で、台湾、シンガポールへの海外展開を考えているという。「2016年はシェアリングエコノミー元年とも言われている。信頼性、安全性の高い日本から、荷物預かりサービスを世界に広げていきたい」(高木さん)と話している。

 同じく優秀賞を獲得したGoodsは、マーケティングツールの「POILY(ポイリー)」使って、飲食店に特化した経営支援サービスを提供。まず口コミの集計サービスでは、ぐるなびや食べログなどの口コミサイトに掲載された契約飲食店についての口コミ情報を自動集計し、「⚪︎⚪︎のサービスが悪かった」といったポジティブ評価/ネガティブ評価をまとめ、ファクスで店舗に送信する。メールでないのは、アルバイトの多い飲食店ではパソコンやタブレットを見ることが少なく、紙が従業員の情報共有ツールになっているため。1店舗あたり月500円の料金で、飲食店側が口コミ情報をネットから集計する手間を省く。

 マーケティング支援サービスでは、来店したお客様がPOILYのアプリをスマートフォンにダウンロードし、店に対するアンケートに回答してもらう。テーブルにアンケート用紙が置いてある飲食店がよく見かけられるが、なかなか回答してもらえないのが難点。そこでアンケートに回答したお客様はポイントを与え、一定の点数になるとお店側からギフトがもらえる仕組みにした。広告の購読や再来店でもアプリが起動して自動的にポイントがたまるという。こちらの利用料は月1万5000円程度を想定。

 社長の石川聡彦さんは東京大学を休学した後、会社を起業して3年目。POILYに先立って、飲食店向けに料理の配送と弁当予約のサービスを立ち上げたものの、その二つはなかなかうまくいかなかったという。原因として飲食店経営者のヒアリングが足りなかったことを痛感。新たにヒアリングを重ねる過程で、飲食店がどんな悩みを抱えているのか気づいていくうちに、POILYのビジネスプランが出来上がったという。石川さんは「大量の口コミデータ解析を通して、飲食店が最高のおもてなしを提供するようにしたい」と話し、5年後には契約10万店、300億円の売り上げを目指している。

 一方、企業賞のエムスクエア・ラボは、新規創業予定の会社。日本の農業の就業人口が激減し高齢化が著しい中、農産物の高品質を保ちつつその生産性を向上させるため、農業と工業の連携を支援。仕事内容もプロセスも製品もまったく違う農業と工業の従事者とで、意思疎通や協業をスムーズに行うための「共通言語」づくりを行ったり、メーカーと共同でロボットや自動化装置の開発にまで乗り出している。

 ただ、社長の加藤百合子さんによれば、目に見えない課題も多く、「農業では経営分析や作業分析ができていない。メーカーが参入してロボットや自動化装置で協業していくにも、農業従事者はスタートラインにも立っていない状態で、まずはそこをきちっとやる」という。収益事業としては、農業ロボットの販売だけでなく、たとえば除草といった個別の農作業を切り出しての全国展開や、成功事例のノウハウの有償提供も行っていく予定だ。

 3D!は、歯科技工士でもある社長の荒川愛子さんが、その知識と経験を生かして創業。歯科医院で患者さんの歯型の石膏模型の保管に多額の費用がかかっている現状に疑問を感じ、3Dスキャナーで歯型を高精度に読み取り、その3Dデータをクラウド上で管理するサービスを展開中。手間とコストの削減に成功した。

 さらに、この秋からは歯並びを治す歯科矯正具として、3Dプリンターを活用した透明なクリアマウスピースの提供も開始している。実は荒川さん本人もクリアマウスピースを着けてプレゼンしていたが、そう言われるまでまったくわからなかったほど。これまで不気味に見えていた矯正用ブレースとの違いは明らかで、透明マウスピースで競合の米インビザラインに対する価格優位性や診療時間の短さをアピールしながら、3D技術を生かした自前の歯科医院も全国主要都市に展開していく計画だという。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
今回はファイナリスト6チームの代表者6人のうち、過半数の4人が女性。記事には載っていませんが、あとの2人は有限会社かたらんね社長の松山ちあきさん(歴史文化で人生に喜びと潤いをもたらす事業)と、非営利活動法人アジェンダやまがた代表理事の児玉千賀子さん(音楽による障害児支援事業)です。まさに時代を表していると言え、女性起業家の活躍に大いに期待です。

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