ニュースイッチ

「まずいものランキング」首位からのロングセラーへ。タマノイ酢、独自性訴求つづける

『タマノイ酢さん、商品化はまだ早過ぎるよ』を聞きながら
「まずいものランキング」首位からのロングセラーへ。タマノイ酢、独自性訴求つづける

エスニックな味を演出するタイ風あんかけの素「BeLoved ASIA」

 タマノイ酢(堺市堺区、播野勤社長、072・238・1021)はこだわり続ける酢の技術で独自の価値をつくり、消費者の心をつかむ商品開発と販売促進に徹する。例えば同社の代名詞となった黒酢飲料では20年前に開発した当初、雑誌の「まずいものランキング」で2年連続首位に立つ「不名誉」に輝いた。しかし、試飲会で粘り強く販促を続けたほか、健康志向の高まりも追い風に、コンビニエンスストアにも並ぶロングセラー商品に成長した。時間をかけて独自性を訴求し、顧客満足を高めてきた。

 「『タマノイ酢さん、商品化はまだ早過ぎるよ』と出荷先からよく言われるが、当社らしいタイミングで発表した」。購買企画部の永井美帆担当は、9月に発売した即席調味料「BeLoved ASIA(ビラブド アジア)タイ風あんかけの素」についても、先行性をそう強調する。

 アジアのエスニック料理は現在、バブル経済期、2000年前後に次ぐ3度目のブームを迎えており、その主役はタイ料理。だが、スパイスの香りが強く苦手な人も多い。そこで、日本人になじみやすい黒酢でまろやかなタイ料理をつくれる同調味料をいち早く投じた。永井担当は「消費者との関わりを大切にじっくり育てる」と意気込む。

 卵焼き、焼きそば、ごはんなどもタイ料理風に簡単に調理できる。フリーマーケットで試食会を開き、食品スーパーやドラッグストアで試食販売もしている。商品に込めた思いを直接伝える顧客志向の販促を貫く。

 大阪支店マーケティング本部の成沢隆邦チームリーダーは「食品売り場は新商品であふれ、特色がないと置いてもらえない。エスニック食品コーナーを設け、その棚に置いてもらえるような提案をしたい」と言う。イタリア料理が長年かけ日本になじんだように、タイ料理も和風化して食卓への定着を図る。

 主力商品である粉末すし酢「すしのこ」やビネガー(酢)飲料のように、「『この味が良い』と好かれるまで攻める」(成沢リーダー)。妥協はしない。
(文=南大阪支局長・田井茂)

日刊工業新聞2016年11月11日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
20年前は黒酢になじみのない人が多かったように思いますが、今では逆に黒酢を使っているとオシャレ、健康美容によさそうというイメージを持つ人が多いでしょう。

編集部のおすすめ