IKEA、ユニリーバに続け!「脱炭素」でクールな日本企業は

パリ協定を積極的に支持。欧米はビジョンを方向性と考えている

100%再生エネ化を目指し、太陽光パネルを店舗に設置(イケア)

 ユニリーバやイケアなど海外企業が再生可能エネルギーを全面的に導入すると宣言している。温室効果ガスの排出を実質ゼロにする“脱炭素”を掲げた温暖化対策の国際ルール「パリ協定」についても積極的に支持する。脱炭素は事業活動の制約となりそうだが、気候変動を経営リスクと捉え、経営戦略として再生エネの導入を推し進める。日本企業にも脱炭素を目指す動きが広がってきた。  2015年末に気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開かれたパリに欧米企業トップが集結し、パリ協定合意の機運を作った。ユニリーバは先導的な役割を演じた1社だ。ポール・ポールマン最高経営責任者(CEO)はCOP21直前、化石燃料を一切使わない事業活動を目指し、20年までに電力会社から購入する電力すべてを再生エネに切り替えると宣言した。  それから1年、先行したのが日本法人だ。ユニリーバ・ジャパン(東京都目黒区)は国内全拠点と、協力会社が生産で消費する全電力1127万キロワット時に再生エネを導入した。再生エネを使ったとみなせる「グリーン電力証書」を購入して実現した。電力コストは上昇するが「コスト意識はない。将来への投資だ」と同社の伊藤征慶ヘッドオブコミュニケーションは言い切る。  パリ協定の発効で二酸化炭素(CO2)の排出が厳しく制約される。今は安価な電力を供給する石炭火力発電所も、規制強化による発電コストの上昇が見込まれる。米国ではオバマ政権が打ち出した排出規制によって石炭火力はCO2回収装置がなければ運転ができなくなり、コスト上昇が避けられない。  逆に再生エネはコストが低下しており、いずれ火力を下回るとの見方が多い。「他社も再生エネの利用を加速すると、コスト削減が進む。火力発電の価格が上昇してからの対応では遅い。スピードが重要だ」(伊藤氏)と強調する。需要が増して再生エネを確保しづらくなる可能性も考え、先手を打った。  気候変動への危機感も強い。異常気象で農作物が不作になると、原材料調達に支障が出てしまう。気候変動の抑制は、事業継続のために不可欠。自らが再生エネを導入し、社会へも啓発して再生エネを普及させる。  家具チェーンのイケアもCOP21に駆けつけ、脱炭素に賛同した。米国ではハリケーンの襲来で3店が閉鎖に追い込まれ、9億円の損失が発生した経験がある。イケア・ジャパン(千葉県船橋市)のサステナビリティマネージャーのマティアス・フレドリクソン氏は「異常気象が進むと原材料価格が高騰する。製品価格に転嫁すると、より良い暮らしを多くの人に提供するビジネスモデルが展開できなくなる」と危機感を募らせる。商業目的で伐採される世界の木材の1%が、イケア製品に使われているという。綿花の使用量も多く、気候変動は経営の脅威だ。  イケアは20年までに全世界の事業活動で消費するエネルギーと同量の再生エネの発電を目指す。すでに風力発電設備を300基以上所有し、太陽光も含めると再生エネに6億ユーロ以上を投じてきた。全世界の再生エネ比率は50%以上に到達した。  イケア・ジャパンも100%再生エネ化を目指し、全店舗へ太陽光パネルを設置する。発電した電力は売らずに店舗で使う。投資コストはかかるが「短期で投資回収できる」(フレドリクソン氏)と計算する。購入電力を大幅に抑えられるからだ。「長期視点で経営を考えているから決断できた」(同)という。気候変動をリスクと捉え、長期視点で事業の継続を考える点が海外企業に共有する。  COP21に駆けつけた数少ない日本企業の1社がLIXILだ。30年に向けた環境ビジョンを3月に公表し、「環境負荷ネット・ゼロ」を目指すと宣言した。事業活動で発生した環境負荷を、社会の環境負荷低減に貢献した量で打ち消す。そのために省エネや節水性能を追求した製品の開発と販売量を増やしていく。  長期ビジョンを策定する日本企業は少ない。社会から必達と受け止められるため、根拠のない目標の公表には慎重となる。LIXILの川上敏弘EHS推進部長は「欧米はビジョンを方向性と考えている。我々の30年ビジョンも方向性だ」と説明する。  「ネット・ゼロ」の野心的な目標は、国際交渉を見守りながら設定した。COP21の開幕前、産業革命前よりも気温上昇を2度C未満に抑える方向で議論が収束されつつあった。科学者は2度C未満達成の選択肢に「脱炭素」を示しており、同社も整合性をとって「ネット・ゼロ」を目標に据えた。  ゼロという高い目標を掲げたことで、CO2の大幅削減を念頭に置いた技術開発が促される。数%の省エネを競うよりも、競業との差を一気に広げられる。「排出ゼロへ向かう世界の趨(すう)勢を捉え、歩み始めた」(川上部長)と手応えを語る。 (LIXILの30年環境ビジョンのイメージ) <次のページ、アスクルは企業が強くなるチャンスと捉えている>  アスクルは7月、顧客や調達先を招いた「環境フォーラム」を初開催し、「30年CO2ゼロチャレンジ」を発表した。亀井一行CSR総務統括部長は「パリ協定で社会からの要請が低炭素から脱炭素へ変わった。30%減や50%減は中途半端だ」とゼロを目標とした理由を説明する。  取引先が集まる場での公表は「企業間連携の可能性を考えるため」(亀井部長)だ。同社はメーカーではないため、排出削減に関与できる余地が限られる。フォーラムで岩田彰一郎社長は「最新テクノロジーをフル活用したCO2削減」を取引先に呼びかけた。  すでに日立製作所と協業し、人工知能(AI)を利用して最適な配送ルートを割り出している。日産自動車の商用電気自動車(EV)12台も活用し、配送時のCO2排出削減を追求する。日立や日産はアスクルが実践で使ったデータを得られ、開発に反映できる。ゼロという大胆な目標設定が最新技術の開発を後押しし、アスクルは導入で先行できる。  同社は流通のムダを排除するビジネスモデルを追求して創業した。配送のCO2削減はムダの低減につながるのでビジネスモデルと一致し、事業基盤を強化できる。「パリ協定は企業が強くなるチャンス」(亀井部長)と期待する。 (アスクルが導入した商用EV) (文=松木喬)

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