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ストレスチェックは会社のうつ病対策につながるか

人事管理に問題、能力を上手に生かしてこそ
 パワハラ、セクハラなどの言葉が連日、新聞紙上を賑(にぎ)わせています。自殺やうつ病による社会的損失額は、少し古い数字ですが、2009年1年間で約2兆7000億円にものぼると公的機関による推計結果が出ています。厚生労働省が15年12月からストレスチェック制度の義務化を始めたことはご存じのことと思います。50人以上の従業員を擁する事業者は年に1回、ストレスチェックを実施するよう規定されています。

 私が現在の精神科病院の三代目病院長になったのは1992年、40代半ばすぎでした。300床ほどの病床数で、精神科で言えば中規模の病院でした。これからの精神医療、そして精神科病院はどうあるべきか、ということを当然考えました。

 当時、精神科医療はまだ閉鎖的な環境の中で行われているとの批判的な見方がありました。精神科医療に関わる我々は、何とか開放的な医療、他の一般身体科病院のように病む人から求められるような病院にすべく努力してきました。

 院長になってすぐに日本精神科病院協会に入会し、協会活動を通じさまざまなことを学びました。海外の精神科病院の見学に行ったのもその頃です。精神科医療先進諸国では、米国はじめ、“収容の時代”からベッド数の削減で“地域移行”を進めることが始まっていました。

 長期慢性の障害と疾患を併せ持つ患者は郊外の施設に、救急急性期の患者は市内の急性期病棟を利用し、短期での入院治療後、地域で手厚い福祉も含め、社会復帰を目指していました。

 日本における精神医療福祉も、入院治療後に早期に地域で対応する体制は既にできつつあります。平均在院日数は全国的に減少傾向にあり、通院治療での対応となってきています。

 そんな中、社会的背景からうつ病などが増え続け、11年に精神疾患患者数が320万人を超し、国の医療の重要対策としてがん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病医療の4疾病に精神科医療を加え、5疾病としての検討が始まりました。外来患者が確実に増え、特にうつ病は景気停滞など経済的な背景をもとに増加しつつあります。

 医療現場で感じることは、若い人のストレス耐性の脆弱性もあると思われます。一方会社の人事管理も問題があるように感じます。良き人材を、その能力を上手に生かし業務効率を上げようと言う意識が会社上層部に欠けているようにも感じます。ストレスチェックの結果によってより良い人事管理の確立が求められるところです。
(文=山田雄飛・医療法人社団薫風会山田病院院長) 
日刊工業新聞2016年11月4日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
パワハラを気にしてうつになりそうな上司も増えていくように思うのだが・・

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