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造船・重機のイメージ変わる?“男性企業”から、なでしこ銘柄に

女性の活躍拡大へ環境整備着々
造船・重機のイメージ変わる?“男性企業”から、なでしこ銘柄に

川重の研修風景

 造船・重機大手が女性が活躍できる職場環境の整備や企業風土醸成に取り組んでいる。“男性企業”のイメージが強い業界だが、グローバル化の進展など競争環境が変わる中、一層の成長にはダイバーシティーの推進が不可欠になっているとの認識だ。安倍晋三政権は指導的地位に占める女性の割合を2020年に30%にする目標を掲げ、今国会には女性活躍推進法案が提出されている。従業員に多様な働き方を認める動きが広がる。

 「なでしこ銘柄(2014年度)」に初選定された川崎重工業。経済産業省と東京証券取引所が共同で女性活躍推進に優れた上場企業を抽出するもので、造船・重機メーカーでは13年度にIHIが選ばれている。
 川重は昨秋、20年までに女性管理職数(課長相当以上)を3倍に引き上げる方針を設定。現時点で幹部職員に占める女性比率は約0・6%と少ないが、4月1日付で5人が昇格するなど着実に増加している。三菱重工業やIHIもすでに数値目標を定め、女性登用を積極的に推進している。IHIでは14年に女性初の執行役員が誕生した。

 各社とも全社を上げた意識改革を進める。川重は社内女性のネットワーク活動「4U(フォーユー)ネットワーク」を組織。「ライフステージにかかわらず、十分に能力を発揮し、自信と誇りを持って働き、マネージャーやプロフェッショナルとして活躍する」(川重担当者)のが狙いだ。

 ただ、各社とも100年を超えるような歴史有る企業が多く、風土醸成や変革はたやすくない。川重は14年度、女性事技職207人とその上司146人に対し、女性のキャリアに関する意識調査を実施。上司を交えた研修を催し、ギャップを埋める施策を練る。
 三菱重工も育児休業中の女性と上司の面談や先輩の“ママ社員”との懇談会を開いており、その際に「ベビーシッターを呼んで研修に集中できる環境を整えた」(担当者)という。育児や介護が社員のキャリア中断や離職の大きな要因になっていることを踏まえ、4月から「在宅勤務制度」を試験導入するとともに、「配偶者の海外赴任に伴う休職取扱」制度を正式にスタートした。
 社内外の技能競技会に女性従業員が参加するケースも増えており、現場を含めて女性の活躍が目立ってきている。重要なのは「さまざまな制度を形骸化させず、継続していくこと」(三菱重工担当者)。それには首脳陣からの定期的なメッセージの発信が重要になる。
日刊工業新聞05月18日機械・ロボット・航空機面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
数年前、IHIのアルジェリアでのプラント改修に携わる女性技術者を取材したことを思い出した。約40年に及ぶIHIのアルジェリアプロジェクトの歴史でも、女性が駐在したのは初めてと聞いた。肩肘を張らず、国籍もさまざまな現地スタッフともに仕事を楽しむ彼女の姿は同世代としてまぶしく、頼もしく感じた。現地工場側からのもてなしや同僚に囲まれ迎えた誕生日は、さまざまな思い出とともに灼熱の日々を彩ると話していたのが印象的だった。世界で活躍する日本女性にエールを!

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