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3年前にわずか2%だった男性社員の育休取得が8割になった会社

大和証券、ベビーシッター利用料に補助。「イクメン」に手厚い支援
3年前にわずか2%だった男性社員の育休取得が8割になった会社

大和証券はワークライフバランス実現で生産性アップを目指す

 大和証券グループの2016年度の男性社員の育児休業取得率が80%に達する見通しとなった。高い取得率は証券業界では珍しい。同社は育児参加に熱心な「イクメン」社員に手厚い支援を行っている。入学式などに合わせ休暇を取得できる制度を春に創設し、9月からはベビーシッター利用料を補助する制度も始めた。20年度に100%取得を目指し、ワークライフバランスを実現することで社員の労働効率改善を後押しする。

 男性の育休は制度として確立しているが、多くの会社で実際の利活用は低調だ。大和証券グループは社内結婚が多く、産休後の女性の復職を支援する狙いもあり、男性の育休取得を奨励している。

 社員に子供が生まれると育休の案内を送るほか、上司にも連絡し育休を取得するよう促してもらう。13年度の男性社員の育休取得率はわずか2%だったが、14年度は42%に15年度は73%に上昇。16年度はさらに上がる見通し。

 今春から子供の入園式、卒園式などに合わせて休暇が取れる「キッズセレモニー休暇」制度を開始。今回は477人が取得した。9月にはベビーシッター利用料を補助する制度も創設した。「女性より男性の利用者が多い」(村瀬理紗大和証券グループ本社人事部次長)という。

 女性社員の多い生命保険会社などは男性の育休取得率が高いが証券業界ではまだ低い。女性の活用推進、労働環境改善につながる大和証券グループの取り組みは、今後同業他社にも波及しそうだ。

ファシリテーター・原直史氏「ここまでくれば制度は企業文化に転じていく」


 正直、このニュースには驚いた。証券業界というと男性の育児休暇取得には最もなじみにくい職場という先入観があったからである。ここまで来るには、経営陣を初めとして全社挙げての取り組みがあったに違いない。男性社員の育休取得にとって最大の壁は周囲の理解と思うからだ。ここまでくれば制度は企業文化に転じていく。今後の新しい取り組みも成功していくだろう。
日刊工業新聞2016年11月2日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
ホワイトカラーの働き手が多い金融業界で男性が自由に育休を取れる雰囲気を醸成するのは社会のダイバーシティを促進する上で大切なことだ。更に進めて、労働生産性が低いホワイトカラーの仕事の進め方から見直し、無駄な残業をなくすことが女性の社会進出や少子化対策に重要だろう。

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