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「チョコレート(ベルギー)」という表示の場合、原料の原産地は?

揺れる加工食品の原料原産地表示。例外多く実効性はいかに
 農林水産省と消費者庁の「加工食品の原料原産地表示問題」が、大詰めを迎えている。加工食品すべてに原料原産地を表示することを6月に閣議決定したが、食品事業者が反発。大くくり表示など例外を認める妥協案で着地点を探るが、例外を認めすぎれば実効性を失う。使い勝手の悪い過度な規制にならないか、消費者保護と企業の真のブランド向上につながるか。両方のバランスをどう取るかが焦点だ。

 両省庁の「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」の議論では、加工食品の重量1位を占める原料を対象に原産地を表示することは、合意済み。問題となっているのは、大くくり表示や中間加工原料の製造地表示だ。

大くくり表示で「大豆(輸入)」はOK


 大くくり表示では、調達国が頻繁に変わる場合に「大豆(輸入)」などを認める。しょうゆや小麦粉のような生活必需品では、年間を通じて安定供給するため北半球、南半球など季節に応じて調達先を変える必要があり「相場高騰や、調達先の為替や禁輸措置の問題もからむ」(農水省)ためだ。これにより、原産地が変わる度にラベルを貼り替えるのは難しいとする食品事業者の負担は確実に軽減される。

 中間加工原料の製造地表示では、チョコレートビスケットを「チョコレート(ベルギー)」などと表示する。べルギー原産のチョコレートと取られかねないが実際には他国産チョコレートがベルギーで加工されている可能性もある。消費者から「中国産の原料を日本国内で加工すれば国産になってしまうのでは」と不安の声が出ている。

 調達先が頻繁に変わる点に対しては、ホームページ(HP)を利用する方法がある。伊藤園などの大手飲料メーカーや大手食品メーカーは、この方法を採用している。HPではラベルに比べ、はるかに多くの情報を提供できる。

 調達先がさまざまな国にまたがっても柔軟に対応でき、気象災害や相手国の禁輸措置などによる調達先変更にも便利。ただ、HP表示には両省庁とも「情報提供手段で有効なことは認識しているが、食品表示では扱えない」との立場だ。

 日本の消費者には、国産と表示されていれば、ある程度以上は安心してしまう“国産品信仰”が根強い。冷凍食品メーカーや外食企業には、国産品使用をアピールして好業績につなげているところも多い。それだけに、大くくりや製造地表示により、実態と離れ、国産をことさらにアピールするような悪用が生じる恐れもある。十分な配慮が必要だ。
(文=嶋田歩)
日刊工業新聞2016年10月26日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
なんのための原料原産地表示か。食品偽装の防止?「国産消費」の拡大?前者でああれば加工食品だけでない問題だし、後者なら表示以外にやるべきことあるはず。もう趣旨がよく分からなくなってきている。個人的には言われてほど国産信仰が強いのか?と思うが。

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