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IHIや宇部興産がセラミック複合材で高圧タービン翼、来年度に試作

航空機エンジンメで参画シェア拡大につなげる
IHIや宇部興産がセラミック複合材で高圧タービン翼、来年度に試作

エンジン部品で参画シェアアップを狙う(写真はGEのエンジン)

 IHIや宇部興産、シキボウなどは2017年度にCMC(セラミック基複合材料)を活用した航空機エンジン用高圧タービン翼を試作する。ニッケル合金より軽量で耐熱性が約2割優れるCMCは、航空機の省エネにつながる次世代材料として注目される。研究開発から製造段階に移ることで、米ゼネラル・エレクトリック(GE)をはじめ海外大手の民間航空機エンジンメーカーに対する訴求力が高まり日系企業の国際共同開発への参画シェア拡大につながる見通しだ。

 経済産業省が5カ年計画で進めている「次世代構造部材・システム技術に関する開発事業」の一環。CMCや炭素繊維複合材(CFRP)を中心に研究開発を促進する。川崎重工業豊田自動織機、イビデンなども参画。17年度にCMCを採用した燃焼機部品を試作する見込みだ。

 高圧タービンや燃焼機など高温部品はGEや英ロールス・ロイス、米プラット&ホイットニー(P&W)など欧米の民間航空機エンジンメーカーが強い。IHIや川重などは経産省の支援を受けCMC部材実用化を推進。RRSP(リスク&レベニューシェアリングパートナー)による参画シェアを広げる狙いだ。

 CMCは繊維状の炭化ケイ素(SiC)をセラミックスで挟む構造で、実用化のカギを握るSiC繊維を手がけられるのは宇部興産と日本カーボン。日本カーボンはGE、仏サフランと製造合弁会社、NGSアドバンストファイバー(富山市)を立ち上げており、実質的にこれに対抗する動きになる。

 世界の民間航空機市場は今後20年で市場規模がほぼ倍増するとされる。経産省は材料、織物、加工の各フェーズでの開発を加速。米ボーイングや欧エアバスが計画する次世代単通路機向けエンジンをターゲットにする。

日刊工業新聞2016年10月12日



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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
宇部興産と日本カーボンとそれぞれ動き出したのは面白い。GEは航空機分野だけでなく新型ガスタービンなどでCMCを適用する可能性について検討している。日本の素材がグローバル企業にどんどん使われことは良いことではあるが、それを活用する日本企業もビジネスとして力を付けていかないとGEなどとの差は開いていくばかりになってしまう。

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