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ルネサスや東芝など7社、災害時の半導体生産で連携

部材調達網の相互利用などを検討
ルネサスや東芝など7社、災害時の半導体生産で連携

熊本地震で半導体各社の工場が被災したことも契機となった(ルネサスの川尻工場=ルネサス提供)

 ルネサスエレクトロニクス東芝など半導体7社は、震災など非常時に各社が生産を継続できる連携体制づくりに着手する。サプライチェーンの相互活用や生産に必要な部材の融通などを通じて、非常時でも業界全体で半導体生産を継続できる体制を築く。東日本大震災や熊本地震を経て、各社は事業継続計画(BCP)を強化している。新たに業界全体の事業継続に向けた基盤を整え、日本の半導体産業の競争力を維持する。

 2016年度中に、ルネサスや東芝、ソニーなど電子情報技術産業協会(JEITA)の半導体部会で役員会社を務める計7社が議論を始める。連携内容は部材調達網の相互利用を中心に検討する予定。共通する生産工程やサプライヤーの多い国内の同業他社同士が協力することで、工場が稼働停止しても早期復旧できる支援体制を構築する。

 例えばルネサスは自動車制御用のマイコン、東芝はフラッシュメモリー、ソニーは画像センサーなど、それぞれ市場シェアの高い製品を抱える。このため半導体製品の供給停止は完成品メーカーの生産活動に大きく影響し、完成品の出荷停止や需給の逼迫(ひっぱく)を引き起こす。

 2011年3月の東日本大震災や16年4月の熊本地震では各社の工場が被災し、生産を一時停止した。生産設備の微調整やクリーンルームなど特殊な環境が必要な半導体製造は、震災などで被災すると生産再開まで時間を要するのが課題だった。

 こうした課題解決に向け、各社独自のBCPから一歩踏み込む必要があると判断。業界全体で危機に取り組む体制を整える。これまでも非常時に同業他社同士で支援し合うことはあった。新たにJEITA参加企業で制度化することで、より強固なサプライチェーン構築を目指す。

日刊工業新聞2016年9月22日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
「水がきれいで豊富」、「地盤が安定している」などの理由で九州には1960年代から半導体産業が集積しており、熊本地震では多くの会社が被害を受けた。現場レベルでは装置・部材メーカーも含めて技術者同士が助け合い、業界全体で早期復旧に向けて動いていたとも聞く。今回の制度化はそこからさらに一歩進んだ形。日本は震災が多いが、ゆえに対策ノウハウが豊富だという点はいざというときの強みにもなる。震災を機にした横連携の活性化が、日本の半導体産業の競争力強化にもつながってほしい

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