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東京・お台場の「MONO」が新事業構想、スタートアップのアジア連携を強力に後押し

中国・インドネシア・シンガポールのインキュベーション施設と相次ぎ提携
東京・お台場の「MONO」が新事業構想、スタートアップのアジア連携を強力に後押し

MONOの屋内風景(同施設のウェブサイトから)

 東京・お台場という絶好の場所にあり、3Dプリンターやレーザーカッターなどを使ってモノづくりもできる24時間利用可能なインキュベーション施設「MONO(モノ)」。2013年3月のオープンから3年半を迎え、東京都インキュベーション施設運営事業や江東区創業支援事業にもかかわる同施設が、2020年をにらんだ新たな事業構想を9日に発表しました。

 その大きな目標に掲げるのが、「東京臨海部スタートアップドリームタウン」の構築。近隣の産業技術総合研究所・臨海副都心センターはじめ東京都立産業技術研究センター、大企業、金融機関などと連携しながら、臨海部をスタートアップの集積地にするというもの。さらに、目は海外にも開かれていて、アジアのスタートアップエコシステムのネットワーク・ハブとしての役割も目指すとしています。

 国際化の一環としては、中国・深センのシンプリー・ワーク、インドネシアのサトリア(SATRIA)、シンガポール国立大学のブロック71といった、アジアのコワーキングスペースおよびインキュベーション施設と立て続けに連携協定を結びました。うちシンガポールのブロック71にはMONOの拠点を置き、現地の日本人に常駐してもらう計画だそうです。

 MONOの後藤英逸代表はこうしたアジア広域連携の取り組みについて、「アジアのスタートアップのエコシステムに入っていって、日本の企業とアジアの企業をつないだり、アジアでのスモールビジネスネットワークを築いたりしていきたい」と意気込んでいます。

 実は今現在でもMONOの入居者は国際色豊か。43の事業者のうち、中国系が4社、マレーシア、香港、韓国系がそれぞれ1社ずつ拠点を置いています。その先駆けとして2年前に拠点を構えたのが日本3Dプリンターで、それ以来、口コミで情報が広がり、ほかの外国系企業も入居するようになったということです。

 中国から輸入した3Dプリンターを日本向けに改良し、販売する日本3Dプリンターを立ち上げた北川士博社長は、中国吉林省の出身。ソフトバンクの孫正義社長をはじめ日本の起業家に憧れて来日し、3年前に日本で起業。先月には3Dプリンターの累計販売台数が600台を突破しました。

「入居費用などのコストが安いし、情報がいち早く入手できる。人脈も広がりやすい」。北川さんはMONOに入居する利点について、こう話した上で、「いずれ3Dプリンターの自社開発や、3Dプリンター以外の新しい技術を日本に持ち込んで事業展開したい」と将来を見据えています。
《続きは日刊工業新聞電子版のオピニオン欄でご覧になれます》
日刊工業新聞2016年9月12日付電子版掲載
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
MONOと提携した中国のコワーキングスペース「シンプリー・ワーク」のマネージャーの方によれば、中国は中央政府がスタートアップ奨励策をとっていることから、2015年1年間で前年より21.6%多い443万社が新規に登録。うち中小企業が96%を占め、全体の81%がサービス関連だそうです。コワーキングスペースも15年の開業は約100カ所だったのが、今年は3000カ所を超える勢いで急増しているとのこと。15年1月にオープンしたシンプリー・ワークも現在、300社、2000人以上が利用し、5つスペースがあるところを年末までにさらに5つ増設する計画。政府系ファンドやプライベートエクイティ、ベンチャーキャピタルから5000億元もの潤沢な資金が投資マネーとして流入し、一大スタートアップ旋風が巻き起こっているようです。

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