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マツダを支える地域のオープンイノベーション「ひろ自連」とは?

「広島を、自動車に関する技術と文化の聖地にする」- 1年でじわり成果
マツダを支える地域のオープンイノベーション「ひろ自連」とは?

広島大学で開講したシミュレーション開発講座

 マツダを中心にした産学官連携組織「ひろしま自動車産学官連携推進会議(ひろ自連)」が設立されて1年がたった。「広島を、自動車に関する技術と文化の聖地にする」ことを目標に、2015年6月にマツダなど6者が設立したが、これまで活動内容はオープンになっていなかった。設立1周年を受けて明らかになった活動成果からは、この組織がマツダにとって、産学官連携やオープンイノベーションの枠組みの中心を担う重要なものであることがわかる。

 ひろ自連はマツダのほか、広島県、広島市、広島大学、中国経済産業局、県の外郭団体であるひろしま産業振興機構の6者で結成。そこからこの1年間で、マツダのサプライヤー19社を含む28社・団体まで拡大した。

 実際の活動を進めるのは、政策的なテーマを扱う三つの「委員会」と、技術的なテーマを話し合う四つの「専門部会」。いずれも、30年のありたい姿と20年の目標、それに向けた施策とロードマップを策定し、具体的な方向性のもと活動を進めてきた。

専門部会通じソフト開発の有力企業を育てる


 専門部会の一つである内燃機関専門部会では、部会長にマツダの広瀬一郎執行役員パワートレイン開発本部長が就任。昨年4月、広島大学大学院工学研究科にマツダとの共同研究講座を設置し、特任教授と特任助教がマツダから就任した。

 「かなりお金をかけて測定器などを導入し、燃焼のからくりの解明といった学術的な面から内燃機関の研究を進めている」(ひろ自連事務局長を務めるマツダの武田克己主幹)。

 モデルベース開発専門部会では、シミュレーションシステムを使った自動車開発を強化する。広島大、福山大、山口大から8人の講師陣を招いて「モデルベース開発基礎講座」を開催し、エンジニア教育に乗り出した。

 今年だけでマツダの社員が40人ずつ6回にわたり、計240人がこの講座を受講する。サプライヤーなどにも受講者を広げ、いずれは制御システムやソフトの開発を委託できる有力企業を広島に育成したいという。

 また「地場サプライヤ活性化委員会」ではひろしま産振構とサプライヤー19社が話し合って方向性を決定。その一つとして、自動車の騒音・振動低減技術を共同で研究開発する「新技術トライアル・ラボ」を広島市南区に設置した。今後さらにテーマを広げる。

 一連の取り組みからうかがえるのは、活動内容がマツダの方向性とかなり一致していることと、具体的な成果を意識した活動体制になっていることだ。そこには、ひろ自連の顧問に名を連ねるマツダの金井誠太会長(広島商工会議所副会頭)の意向が働いているとみられる。

 「研究開発のテーマが広がり個社では立ちゆかない時代。マツダにとってひろ自連はオープンイノベーションの枠組みそのもの」(武田主幹)。地域の力を企業の力に変えることはできるか。
(文=広島・清水信彦)
日刊工業新聞2016年8月24日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
マツダ主導なんで「マツダの方向性とかなり一致している」は当然といえば当然だろうが、マツダや広島の規模感、そして自動車産業という特異性からして、セミオープンというかセミクローズな仕組みがちょうどいいのではないか。オープンイノベーションはあくまで手段。目的がなるべくずれないように持続的に成果を出していって欲しい。

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