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顧客ファーストで“家庭のIoT化”を仕掛けるドコモの若きコンシェルジュ

ライバルはアマゾンかグーグルかIBMか、それとも・・
顧客ファーストで“家庭のIoT化”を仕掛けるドコモの若きコンシェルジュ

ユーザー視点を大切にサービス開発を進める飯野さん(右)

 スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、音声で端末を操作することが身近になりつつある。端末に話しかけるだけで、ユーザーの知りたい情報を調べて返してくれる。こうした音声の分野で人工知能(AI)の技術を使い、ユーザーの生活を便利にするサービスの開発競争が激化している。

 「家の中でお客さまとの接点が持てるサービスを考えている」と話すのは、NTTドコモでコンシューマー向けのサービス企画・開発を手がける飯野友里恵さん。2011年に入社し、ユーザーがスマホの利用状況を確認できる総合サイト「マイドコモ」や、顧客の複数口座を一元管理する家計簿アプリケーション(応用ソフト)「マネレコ」の開発に携わった。

 直近ではタブレット向けに、生活に必要な情報を提供する「iコンシェル」の新機能を開発し、4日に提供を始めた。「タブレットの6―7割が家の中に置きっ放しになっている」という市場の実態を踏まえ、タブレットを家庭のサイネージ(電子看板)代わりに用いる。天気や鉄道運行状況などユーザーの知りたい情報を検索し、家族で共有できるのが特徴だ。

 ただ、ユーザーが気になることを調べるたびに端末を手にしてアプリを立ち上げるのは煩わしい。そこで音声対話機能を搭載し「家事で両手がふさがっていても声だけで操作し確認できる」ようにした。

(サービス化には社内連携が欠かせない)

音声対話を巡るサービス競争の行方


 サービスの企画・開発にはマーケティングから技術まで幅広いスキルが欠かせない。高度な技術を駆使して新機能を開発しようとすると、技術に目が行きがちになる。

 そのため「お客さま視点」を常に意識し、市場の変化に柔軟に対応できるように心掛ける。それでも「お客さまが本当に便利だと思って使ってくれるか悩む」が、最終的にはユーザーからのヒアリングや、サービスの運用経験などをベースに決める。

 市場では、音声技術を活用した家の中でのサービス開発が相次ぐ。米アマゾン・ドット・コムと米グーグルが独自のホーム端末をそれぞれ開発し、家電などのIoT(モノのインターネット)機器と連携している。その対抗策が重要な開発テーマとなる。

 社内でも今後の方向性について「ハードウエア系で行くのか、(米IBMのAI『ワトソン』のような)ソフトウエア系で攻めるのか、それとも従来のスマホやタブレットのアプリか」といった議論を始めている。

 お客と接点を取りながら「ベンチャー企業や技術を持つ企業と協業し、収益モデルを作ってサービスを投入する」のが当面の目標だ。“家庭のIoT化”はこれからが本番で、活躍の場も限りなく広がっている。
日刊工業新聞2016年8月24日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
なかなか興味深く、悩ましいサービス開発をやっていますね。Amazonエコー、Googleホーム、Appleホームキット・・。スマホはよりパーソナライズに向う中で、リビングで複数の人がサービスを共有するニーズはあるはず。個人的には“買い物”と直結しているAmazonのエコーが日本に出てきたら手強いような気がする。ドコモらしいビジネス、サービスやアセットの活用は何か。アシスタントのハードなら別にルータだっていい。NTTグループのAI開発はおそらくグローバルにみてもそなりの水準にあるはずで、「ワトソン」的なビジネスもありかもしれない。これからの時代は情報や人を管理したりコントロールしたりすることが難しくなる。その中でUX(顧客体験)が経営指標になっていくはず。飯野さんたちにはドコモ内の常識を打ち破って欲しい。

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