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「スロー・トレード」長期化。やっぱり中国の貿易構造が変わり始めた!

12年以降は一貫して貿易の伸びがGDPの伸びを下回る
 世界貿易の拡大ペースが鈍っている。日本貿易振興機構(ジェトロ)が9日発表した「世界貿易投資報告2016年版」によると、2012―15年の世界貿易の伸び率は実質国内総生産(GDP)伸び率の半分にとどまる。国際通貨基金(IMF)などは貿易の伸びが経済成長率より低い現象を「スロー・トレード」と呼んでおり、ジェトロも先行きを注視している。

 ジェトロの報告書によると、ITバブルやリーマン・ショックなどの危機を除き、おおむね世界貿易の伸び率はGDP成長率を上回るペースで拡大してきた。貿易の伸びがGDPの伸びの2倍を超える年もあったが、近年は貿易の伸びが鈍化。12年以降は、一貫して貿易の伸びがGDPの伸びを下回っている。

 IMFは、こうした「スロー・トレード」現象の発生原因を景気循環と構造要因の二つに大別できると指摘している。仮に景気循環が主因の場合、世界経済の回復や資源価格の上昇とともに貿易の伸びも以前のペースに戻ることが予想される。


 しかし、主要貿易国の産業形態の変化など構造要因が支配的な場合、短期の解消は難しく「貿易が低迷する状態は今後も長引く可能性がある」とジェトロは分析する。

 構造要因のうちジェトロは中国の貿易の変化に注目。これまで同国は周辺国から大量に部品を調達し加工・輸出していたが、最近は外資系企業による研究開発投資などを通じて同国自身が技術力をつけ、周辺国からの輸入が減っている。

 ジェトロが中国に進出した日系企業に実施した調査では、原材料・部品の現地調達比率が05年の53・5%から15年には64・7%に上昇した。中国税関総署によると、同国の輸入は7月まで1年9カ月連続で前年割れが続く。「スロー・トレード」が構造要因の場合、中国の輸入は今後も減少が続きそうだ。
日刊工業新聞2016年8月10日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
消費主導に向けた中国の構造改革は一定程度、成果が出始めた。実際、中国の貿易依存度は10年の約50%から15年は約35%にまで大幅に下落。貿易立国はもはや昔話になりつつある。中国は当分、この状況が続くだろう。貿易活性化で期待されるTPPも米国の大統領選とみると、現状、期待薄である。

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