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お盆明けが涼しくなるとアパレル・百貨店が儲かる?

暦の上ではもう立秋。気候に気をもむ業界
お盆明けが涼しくなるとアパレル・百貨店が儲かる?

気候変化で婦人服を柔軟生産する三陽商会

*百貨店、去年の8月は気温高低差が追い風

2015年9月21日


 日本百貨店協会がまとめた8月の全国百貨店売上高は4362億円(前年同月比2・7%増=店舗数調整後)で5カ月連続のプラスとなった。

 8月は、前半が気温が高く盛夏物が、中旬以降は気温低下で秋冬物が販売をけん引した。雨天日の多かった北日本、西日本の一部が伸び悩んだが、全18地区のうち12地区がプラスとなった。

 商品別の売上高は衣料品が前年並みを確保。身の回り品、雑貨は5カ月連続プラス、化粧品は前年同月比21・2%増、美術・宝飾・貴金属が同22・8%増と好調だった。

 訪日外国人向けの実績は購買客数が同3・9倍増。売上高は約172億円で同3・6倍と大幅に伸び、統計開始以来、単月で過去3番目の実績を記録した。

三陽商会、気候変化で婦人服を柔軟生産


日刊工業新聞2016年5月27日


 三陽商会は2016年度に、気候や季節の変化による婦人服の需要変動に対応するため、生産体制を再構築する。季節ごとに生産する商品について、初期の生産量や型数を従来の70%程度に抑える。工場や協力会社に材料を在庫として蓄えておき、売れ行きに応じて追加納入できるよう、生産を見直す。

 2015年秋冬期は暖冬で、コートの売れ行きが前年同期比20―30%減に落ち込んだ。この影響で、16年1―4月の婦人服の売れ行きは同6%減だった。三陽商会はこうした気候などの変化による需要変動に対応し、生産量を調整しやすくする。同時に、リードタイムの短縮も目指す。

 個別の商材でターゲットに見込む季節も、「夏向け」といった大まかな区分から、「盛夏」「晩夏」などと細分化する。冬に春物を買うといった先買いをする顧客が減り、すぐに着たい服を買う顧客が増えていることに対応し、素材や色などをきめ細かく意識して商品開発を進める。「大きく見て暖冬傾向は変わらない」(杉沢幸毅執行役員事業本部婦人服事業部長)として、16年秋冬期はコートの生産量を同30%減に抑える。気温が変動しても使い勝手の良い薄手の羽織物といった中間アウターの生産量は、同44%増にする予定だ。

紳士服でも


 三陽商会は紳士服で、気候の変化に対応しやすい商品展開を推し進める。2015年の秋冬に投入した商品の品ぞろえが、ダウンコートなどの真冬向けに偏重していたため、暖冬の影響を受けた反省を踏まえた。秋口や季節を越えて長い期間に使える、薄手の衣料品や雑貨を充実させる。

 三陽商会の基幹ブランドの「ポールスチュアート」では、ダウンアイテムの生産量を前年比2割減らし、夏物から冬物に切り替える端境期向けのアイテムにシフトする。「マッキントッシュ フィロソフィー」のスポーティーライン「ブリテック」でも、気温に左右されにくいキルティングジャケットや、バッグ、傘などの生産量を倍増する。 

 端境期向けに、帝人フロンティア(大阪市中央区)の開発した素材「オプトマックスHT」を使ったジャケットやコート、シャツを9―10月に発売する。オプトマックスHTは、湿気や赤外線を吸収することで発熱する機能を持った薄手の生地で、背上部などに挟み込んだ。

 今冬シーズンは気温が高く、厚手のコートやジャケットなどの売れ行きが鈍かった。2月の全国の百貨店の紳士服・洋品の売上高は前年同月比4・5%減で、4カ月連続のマイナスだった。

 三陽商会の1―3月の紳士服の売上高は前年並みだったが「防寒具は売れず、薄手で着回しの効く服が売れた」(中山雅之事業本部紳士服事業部長)点を次のシーズンに生かす。
(日刊工業新聞2016年4月15日)
  
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ここ数年は気候変動が激しく、猛暑が続いたかと思えば急に冬のような寒さが来たりと、予測が難しくなっています。今年の秋冬はどうでしょうか。

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