ニュースイッチ

人間の記者はもう不要?ワシントンポストのリオ五輪報道でアルゴリズム活躍

データから競技の結果記事など作成、大統領選の報道にも
人間の記者はもう不要?ワシントンポストのリオ五輪報道でアルゴリズム活躍

同紙の五輪ツイッターではアルゴリズムが女子200m平泳ぎ金藤理恵選手の金メダルも速報

 米国を代表する有力紙のワシントンポストが、リオデジャネイロ・オリンピックの一部の報道に「ロボット記者」ともいわれる記事作成アルゴリズムを使いだした。自社開発の「ヘリオグラフ(Heliograf)」というソフトウエアで、競技データをもとに個別競技の結果を伝える短い記事を素早くまとめることができる。今後、大統領選挙報道にも使われる予定だという。

 ワシントンポストによれば、これまでの五輪報道では多数の記者が長時間にわたって大量の記事を書く必要に迫られていた。それに対し、ソフトウエアを使えば、単純な仕事から記者を解放し、結果を素早く速報できるうえ、より踏み込んだ分析記事や独自報道などに人間の記者や編集者を割り当てられると、その利点を強調している。

 ヘリオグラフは個別の競技結果のほか、競技スケジュールや国ごとのメダル獲得数などの原稿作成に使われ、そうした記事は同紙のライブブログやツイッター、フェイスブック・メッセンジャー、さらにアマゾンの音声アシスタント「アレクサ(Alexa)」でのニュース配信などに役立てられている。

 オンラインメディアのデジタル・トレンドの取材によれば、ワシントンポスト紙では記者など約12人をリオ五輪に送り込み、それより多い人数がワシントンのニュースルームで五輪をカバー。速報などはアルゴリズムに任せ、人間は人間にしか書けない深みのある記事を書くようにしているという。
ニュースイッチオリジナル
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
 1877年創刊のワシントンポストは2013年にアマゾン創業者でCEOのジェフ・ベゾス氏個人に2億5000万ドルで買収され、現在ではアマゾン系の新聞社となっている。ウォーターゲート事件はじめ骨太の調査報道で名をはせた同紙だが、ベゾス氏は買収直後、「調査報道はお金ばかりかかる割に得るものが小さい」という趣旨の否定的な発言をしていた。それでも、元CIA職員エドワード・スノーデン氏が提供した機密情報をもとに、英ガーディアン紙とともにNSAの極秘情報収集活動を暴くなど、調査報道魂は健在だ。かたやアマゾンのノウハウをうまく採り入れているのか、電子版を充実させ購読者を増やしたり、今回のように記事作成アルゴリズムを採用したり、新しい試みに挑戦している。デジタル時代の新聞の生き方としては学ぶべき点が多い。

編集部のおすすめ