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スーパー公務員だけじゃない!自治体職員が挑む“水商売”で地域おこし

<追記あり>東京・多摩から広がる輪
スーパー公務員だけじゃない!自治体職員が挑む“水商売”で地域おこし

7月25日に自治大学校で開かれた「チーム水商売」の初会合。各地の水にまつわる”宝”を出し合った

 自治体職員のネットワークを構築して地域活性化のための人材育成に役立てようと、全国各地で開かれている「全国自治体職員の集い」(発起人=木村俊昭内閣官房シティマネージャー兼東京農業大学教授)。この会議が6月末に東京・多摩地域で開催されてから1カ月が過ぎ、新しい動きが出てきた。会議で知り合った自治体職員ら有志が集まり、地域活性化を考える勉強会を創設した。自治体の枠を超えて地域創生を考える現場を追った。

 「地域の人が魅力に感じない資源を外国人旅行者が興味を持つわけがない」「2020年東京五輪・パラリンピック後を考えるとターゲットは外国人旅行者ではなく地域に住む人々のはず」―。7月25日、総務省自治大学校(東京都立川市)で開かれた勉強会のキックオフミーティングでは、参加者から多様な意見が出た。就業後の時間を使い、自治体職員や民間企業から11人が参加した。

 勉強会は6月末に東京都羽村市で開かれた「全国自治体職員の集い〜47カ所拡大フォーラムin多摩」(平田歩実行委員長=羽村市職員)からスピンオフした初の会合だ。6月末のフォーラムには多摩地域の自治体職員や民間から約90人が参加。教育や子育て、産業などのテーマごとにワークショップを実施した。

 このワークショップで、歴史をテーマに集まった人たちが中心となり今回の勉強会を開いた。主催した自治大学校に勤務する小川大介さんは「フォーラムでの議論を深めるためにまずは緩やかな会合を持とうと思った」と経緯を話す。

 勉強会の名前は「チーム水商売」に決定。歴史をテーマに議論すると、多摩地域は玉川上水や日野用水などの「水」をキーワードにつながっていることに気がつき、水を切り口にした地域おこしができないかとの結論になった。

 初会合では小平市文化振興財団(東京都小平市)の神山(こうやま)伸一さんが「小平市は江戸時代に玉川上水が整備されて開拓が進んだ。新田開発で街は碁盤の目のようになっている」と説明。日野市職員の渡辺あゆみさんは「日野市は緑と清流の街。用水路の管理などを所管する全国的にも珍しい『緑と清流課』があるほど」と紹介。各人が水にまつわる地域の“宝”について話し合った。

 初回ということで突っ込んだ議論までは進まなかったが、自治大学校の小川さんは「隣り合う自治体でも知らないことは多い。会合を重ねて“多摩の水”をテーマにしたビジネスの芽を生み出す」と意気込む。東京・多摩地域で進む連携について、木村内閣官房シティマネージャーは「対話を大切に、実学・現場重視の視点で事業構想の策定に臨んでほしい。実現が楽しみ」とエールを送る。自治体の垣根を越えた新しい取り組みとして全国に波及させるためにも、まずは事業構想をまとめて着実に前進させることが必要だ。
(文=西東京・尾内淳憲)

ファシリテーター・前田亮斗氏の見方


 スーパー公務員ばかりが注目を集めるが、地域には目立たずとも実力とバランス感覚を持った優秀な公務員の方が多数いらっしゃる。仕事がら全国の自治体職員の方と交流があるが、自治体の方から別の自治体の方を紹介してほしいというご依頼をいただくこともよくある。この記事のような取り組みの中で、優秀でやる気のある公務員の方同士が有機的につながって大きなうねりとなることを期待したい。
日刊工業新聞2016年8月12日 中小企業・地域経済面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
ブランド化にはストーリーが大事。歴史は「物語」そのものなので、そこを紐解くというのは重要な作業ですね。地元にいて、あたりまえすぎて見えなくなっているコトやモノを、可視化することにもつながりそうです。

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