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倒産した生活雑貨「Plus Heart」。店舗急拡大の裏に架空在庫

1店舗オープンあたり約3000万円を借り入れも薄利続く
倒産した生活雑貨「Plus Heart」。店舗急拡大の裏に架空在庫

「Plus Heart」公式ウェブページより

 プラスハートは1998年に大阪で設立、「Plus Heart」の店舗名で生活雑貨や服飾雑貨を取り扱っていた。設立後すぐに多店舗展開に乗り出し、大手総合スーパー内への出店によりわずか5年半で100店舗を達成。2016年には120店舗を展開するまでに成長した。

 その急成長は、大手総合スーパーの出店攻勢と軌を一にする。出店による拡大路線で、ピーク時の11年8月期には年売上高約64億円を計上していた。

 しかし、その利益水準は決して高いものではなかった。ピーク時こそ約4700万円の利益を計上したものの、同業他社との競争激化からその後は数百万円の利益にとどまっていた。

 さらに1店舗のオープンにあたり、金融機関から約3000万円を借り入れていたため、有利子負債は30億円まで膨張。借り入れ増加に伴う支払利息負担に加えて、店舗賃料・人件費負担なども、重くのしかかっていた。

 信用不安が表面化したのは、15年3月。仕入れ先に対して支払いサイトの1カ月延長を求める書面が送付されたのがきっかけだった。

 その1年後にさらに1カ月のサイト延長を要請する書面が送付されると、業界内での信用不安は一気に高まった。その後、ほどなくして金融機関へ返済のリ・スケジュールを要請。当社の資金繰りの悪化は関係者へ広く知れ渡った。

 金融機関への支援要請に先立つ財務調査で、20億円におよぶ粉飾決算が発覚、実態は債務超過だったことが判明した。具体的には、約18億円の架空在庫を計上していたもので、実際には2年以上前からは収支が成り立っていない状態が続いていた。

 この粉飾決算を理由に取引金融機関はリスケ要請に対する態度を硬化。全行同意を得ることが難しいとの判断から、5月30日に大阪地裁へ民事再生法の申請を余儀なくされた。
(文=帝国データバンク情報部)
<概要>
社名(株)プラスハート
住所:大阪市中央区北浜1−9−9
代表:松尾正司氏
資本金:3660万円
年売上高:約58億1100万円(15年8月期)
負債:約40億7100万円
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
「日本でいちばん大切にしたい会社」で有名な未来工業の経営者が話していた。企業の右肩に上がっていく数字はすべてパラレルが理想だと。売上高、従業員数、利益、プラスハートなら店舗数なども指標になるかもしれない。1つでも伸びが急激な項目があれば、後になって必ず反動がくると。経営者はもちろん反動を想定して戦略や対応も考えているケースがほとんどだが、その経営者の能力を超えた反動の場合、会社は耐えきれなくなる。

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