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「米飯」と「北海道産米」の差とは!?冷凍食品大手“国産品信仰”に対応

 冷凍食品大手各社が、国産食材を原料とする商品に力を入れている。日本水産は「国産もち豚焼売」や「北海道産かぼちゃクリームコロッケ」、ニチレイフーズは北海道産牛肉を使った「特製ビーフカツレツ風。」、マルハニチロは「国産鶏のチキン南蛮」などをそれぞれ9月に発売する。味の素冷凍食品も、鹿児島県産黒豚を使ったギョーザを数量限定で発売した。低価格志向の強い冷凍食品は原料に輸入食材を使うことがほとんどだったが、消費者の“国産品信仰”もあって、国内調達の波が押し寄せている。

原料原産地を明示は有力な選択基準


 日本水産の「国産もち豚焼売」は、銘柄豚の「和豚もちぶた」ならではのジューシー感とうま味が特徴。副原料のたまねぎや小麦粉も、国産にこだわった。ニチレイフーズは「匠御菜(たくみおかず)」ブランドのビーフカツレツで北海道産牛肉、「特製牛肉どうふ。」で国産大豆品種「ふくゆたか」を使用。消費者に“大人のこだわり”をアピールする。

 冷凍食品はスーパー店頭で“全品3割引き”などと特売の対象にされることが多く、消費者の低価格志向が強い。一方で最近は、食に対する安心・安全意識の高まりから、価格が多少高くても安心感がある国産食品を買う消費者も増えている。こうした意識を持つ消費者にとって、原料原産地を明示した冷凍食品は有力な選択基準になり得る。

米飯と北海道産米では好感度に差


 冷凍食品メーカーにとっても、国産食材使用や産地表示はメリットがある。商品が高付加価値である理由を、消費者に分かりやすくアピールできるからだ。ニチレイフーズの竹永雅彦執行役員は「焼きおにぎりでも、米飯と表示するのと北海道産米と表示するのとでは、消費者の好感度に差がある」と指摘する。

 食の安全では、中国の食品メーカーが消費期限切れの鶏肉などを使って生産した食品をファストフードやコンビニエンスストアに卸していた問題が2014年に発覚。日本企業なども被害を受け、企業や消費者は今も影響を引きずっている。

中国の“チキン事件”以降顕著に


 日本水産の大木伸介取締役常務執行役員は「中国の“チキン事件”以降、消費者の国産志向は顕著になっている」と見る。その上で「原料へのこだわりは差別化の有力なキーワードだ」と主張する。

 冷凍食品大手が国産食材に力を入れる背景には高齢化に伴い、冷凍食品ユーザーにシニア層が増えているとの事情もある。健康を気にするシニアが商品選びで重視するのは、安全性。国産食材の使用は、そのニーズにマッチする。

 家庭で食べる主食米に比べて、牛丼チェーンなどの業務米や、生鮮野菜に比べ冷凍食品野菜は、調達コストの関係から割安な輸入ものを使う比率が高かった。消費者ニーズの変化につれて、その構図も少しずつ変わりつつある。
(文=編集委員・嶋田歩)
日刊工業新聞2016年8月9日 建設・エネルギー・生活2面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
冷凍食品はいつでも安定した値段を保持するために輸入野菜を使用している、というイメージがありました。「輸入だから不安」「国産だから安心」と安易に言えませんが、冷凍食品であっても地産地消ができるのはいいことだと思います。

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