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進化するサイバーセキュリティー。IoTへの対応急務に

2019年の市場規模は1160億ドルに
進化するサイバーセキュリティー。IoTへの対応急務に

今後はIoTに対するセキュリティー支出が増加 [出典:ガートナー(2016年7月)]

 インターネットを活用したデジタルビジネスの成長が期待される一方で、サイバー犯罪やサイバー攻撃への懸念が高まっています。とりわけ急がれるのが、金融サービスやエネルギー関連施設、通信施設、医療機関といった重要インフラのサイバーセキュリティー。同時に、今後、爆発的な普及が見込まれるIoT(モノのインターネット)への対応も焦点となっているようです。

 サイバーセキュリティー市場は2016年に920億ドルに達し、2019年の市場規模は1160億ドルに-。ガートナージャパン主催で7月に都内で開かれた「ガートナー セキュリティ&リスク・マネジメントサミット2016」。ガートナーリサーチ部門のシド・デシュパンデ主席アナリストは、講演でこうした見通しを示しつつ、「IoTの進展により、攻撃者はIoTにフォーカスして攻めてくる。だが、2020年までに、表面化する企業へのサイバー攻撃の25%以上がIoT関連になるとみられるのにもかかわらず、IoTにはセキュリティー予算の10%未満しか割り当てられていない」と注意を促しました。その上で同氏は、「これからはセキュリティーの自動化も焦点になる」とも指摘します。

 そうしたベンダーの一つに、英ケンブリッジと米サンフランシスコに本社を置くダークトレースが挙げられるでしょう。ケンブリッジ大学の機械学習と数学理論の研究者と、MI5(軍事情報活動第5部)およびGCHQ(政府通信本部)という諜報機関の専門家の協力により2013年に設立され、導入実績で1200社以上と急成長を遂げています。

 企業など組織内のユーザー、デバイス、ネットークの「正常な挙動」と「異常な挙動」を人工知能(AI)が自動的に学習し、社員による内部不正も含めたサイバー脅威をリアルタイムに検知するシステムを提供。成長性を見込んで、7月に実施した合計6500万ドルの資金調達では、ソフトバンクグループも出資者に名を連ねているほどです。

 同社は事務所向けのセキュリティーシステム以外に、インフラ向けにも事業展開を進め、この分野の第1号ユーザーとして公表しているのが、欧州の電力の約8%をまかなう英大手電力会社のドラックス。ダークトレース日本法人によれば、国内でも電力関係や工場など制御系への導入に向けて企業と話し合いを進めているそうです。

 さらに、8月になって「サイバーセキュリティーの自動化」という観点で見逃せない動きが出てきました。…
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日刊工業新聞8月8日付「デジタル編集部から(6)」
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
ガートナーのデシュパンデ氏によれば、セキュリティー市場が成長しているにもかかわらず、セキュリティーソフトウエアベンダー上位5社(順にシマンテック、インテル、IBM、トレンドマイクロ、EMC)の2015年の売上高はIBMを除き、総じて減少しているそうです。その他の競合他社は「力強く成長」しているとのことで、将来はベンダーの統合・集約が起きると予測しています。

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